電力と温水を同時に作る太陽電池、遠赤外線でエネルギー効率78%:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
太陽光発電の大量導入に向けた技術開発の一環で、電力と温水を同時に作ることができる太陽電池の実証試験が始まった。静岡県・掛川市の温泉施設に140枚の太陽電池モジュールを設置して、性能や信頼性を評価する。開発したメーカーの実測では発電効率が15.5%、集熱効率が62.5%に達した。
遠赤外線に変換して集熱効率を高く
実証試験に入ったハイブリッド太陽電池モジュールの特徴の1つは、発電部の裏面で水を通す特殊加工のポリエチレン管にある。ポリエチレン管の外側を微細なカーボン粉を添加したゴム状の材料(特殊エストラマー材)で包み込んだ構造になっている。
特殊エストラマー材は太陽光の赤外線の波長を変えて遠赤外線に変換する性質がある(図3)。遠赤外線は暖房器具にも使われる加熱力の高い光で、物質に当たると内部の分子を振動させて温度を上昇させる作用が働く。水にも吸収されやすいことから、効率的に温水を作ることが可能になる。
太陽光のエネルギーを利用して電力と温水を作るハイブリッド型のシステムとしては、ミラーを使って光を集めて水を温水に変える方法もある。NEDOのプロジェクトの1つで、カネカが2014年度から開発に取り組んでいる熱電ハイブリッド集光システムが代表的な例だ(図4)。
このシステムでは湾曲したミラーを使って太陽電池に光を集めて発電するのと同時に、太陽電池の裏側にある配管に冷却水を通して温水を作り出す。太陽電池の温度上昇を防いで発電効率を高めながら、冷却水を温水に変える仕組みだ。2016年度もNEDOのプロジェクトで改良を続けて、農業分野に応用するための実証試験を予定している。
NEDOの太陽光発電多用途化実証プロジェクトでは、通常の太陽光発電システムの導入がむずかしい場所でも適用できる技術やシステムを実用化することが目的になっている。2013〜2016年度の4年間をかけて実施する計画で、主なテーマは3つある。発電コストの低下、設置場所の拡大、付加価値の向上に取り組む。ハイブリッド型の太陽電池は電力と同時に温水を作る高付加価値の技術として実用化を進めていく。
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