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バイオマス発電の排熱で高糖度トマトを栽培、雪国の冬の農業を低コストに:自然エネルギー(2/2 ページ)
地域で生み出す再生可能エネルギーの熱を利用したトマトの栽培プロジェクトが青森県内で進んでいる。運転中の木質バイオマス発電所の排熱を農業用ハウスに送り込み、高糖度トマトを栽培する計画だ。雪国で課題になる冬の暖房コストを再生可能エネルギーで削減して農業を活性化させる。
冬の農業を促進するバイオマス産業都市へ
木質バイオマス発電所を運営する津軽バイオマスエナジーには平川市も出資して再生可能エネルギーの地産地消を推進している。青森県の内陸部に位置する平川市には平地・丘陵・山地が広がっていて、それぞれの地形を生かして稲作・リンゴ栽培・林業に取り組んできた(図4)。
人口の減少が進む中で農林業を活性化するために、「平川市バイオマス産業都市構想」を2016年6月に策定して国の認定を受けている。すでに運転を開始した木質バイオマス発電事業を先行モデルに、稲わらやもみ殻、市内の集落で発生する排水の汚泥も利用して、バイオマスによる各種の事業を市内全域に展開する構想だ(図5)。荒廃した農地や廃止した学校を活用して地域を再生する狙いもある。
2025年度までの10年間に、市内で発生する間伐材・林地残材や農業・食品廃棄物などの利用率を100%に高めることが目標だ。4つの事業化プロジェクトを通じて未利用のバイオマス資源を活用していく計画で、そのうちの1つに「農業促進(冬の農業展開)プロジェクト」がある(図6)。
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