農林業を発展させるメガソーラー、町が認定して3万8000世帯分の電力:自然エネルギー(2/2 ページ)
岩手県の農山村で巨大なメガソーラーの建設プロジェクトが始まった。2019年に運転を開始して年間に3万8000世帯分の電力を供給する計画だ。農林業を健全に発展させるため、自治体が再生可能エネルギーの導入区域を決めて発電事業を認定した。売電収入の一部をCO2削減と雇用創出に生かす。
売電収入の一部をCO2削減活動に
レノバはメガソーラーの建設に先立って、軽米町と立地協定書を締結した。農林水産省が2014年5月に施行した「農山漁村再生可能エネルギー法」に基づいて、町から林地開発の認定を受けてメガソーラー事業を実施する。
この法律の正式な名称は「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」で、農山漁村を再生可能エネルギーで活性化することが目的だ。立地自治体が基本計画を策定して、再生可能エネルギーの発電設備を導入する区域を決めたうえで発電事業を認定する必要がある(図4)。農地や保安林などは除外しなくてはならないが、荒廃して再生が困難な場合には整備促進区域に加えることができる。
軽米町が策定した基本計画では、具体的な事業計画が固まっていた6カ所を整備促進区域に設定した。いずれも林地で、5カ所はメガソーラー、1カ所は鶏糞バイオマス発電所の建設用地である(図5)。鶏糞を燃料に「十文字チキンカンパニーバイオマス発電所」が2016年11月に運転を開始している。
発電事業者は軽米町と協定を締結したうえで、売電収入の一部を町に納めることになっている。納付する金額は発電事業の投資額や対象区域の価値をもとに算出する決まりだ。森林には防災に役立つ価値に加えて、二酸化炭素(CO2)を吸収する価値がある。
軽米町は林地を開発して建設したメガソーラーによって失われるCO2吸収価値を事業者の売電収入で代替する方針だ(図6)。事業者から得た収入を基金で運営して、森林の整備や遊休農地の再開発などに生かす。収入の一部を使って農林業の生産施設も整備する予定で、町内の雇用の拡大に役立てる。
今後も基本計画に沿って整備促進区域を設定しながら、再生可能エネルギーの導入を通じて農林業の発展を目指す。基本計画では整備促進区域を町の林野面積の10%(1800万平方メートル)以下に抑えることも決めた。現在までに設定した6区域の合計は850万平方メートルで、まだ半分以上の余地が残っている。
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