廃棄物発電がうどんから下水へ、ため池には太陽光発電を:エネルギー列島2016年版(37)香川(3/3 ページ)
面積が全国最小の香川県の再生可能エネルギーは太陽光とバイオマス発電が中心だ。バイオマスでは廃棄物を再利用する取り組みが活発で、うどんカスに続いて下水や生ごみから燃料を作って発電に活用する。年間を通して雨が少ない利点を生かして、ため池の水上に太陽光発電を展開していく。
小さな県に1万5000カ所のため池
香川県のバイオマス発電の取り組みは始まったばかりだ。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備は高松市の下水処理場を含めて2件しかない。再生可能エネルギーの導入量の大半は太陽光発電だ。面積が全国で最も小さいにもかかわらず、すでに運転を開始した太陽光発電設備の規模では27位に入っている(図7)。
その中でも電力設備工事を手がける四電工グループの取り組みが活発だ。四国で11カ所に展開する太陽光発電設備のうち5カ所が香川県内に集まっていて、発電能力を合計すると23MW(メガワット)になる(図8)。
特に規模が大きいのは、観音寺市で2016年3月に運転を開始した「サンシャインパーク豊浜」である。繊維メーカーの富士紡グループが所有する工場の跡地を借り受けて建設した。用地の面積は16万平方メートルに及び、発電能力は12.5MWに達する(図9)。年間の発電量は1300万kWhを見込み、一般家庭で3600世帯分の電力を供給できる。
香川県は降水量が少ないために、県内には農業用ため池が1万5000カ所もある。ため池の水面に太陽光パネルを設置できれば、太陽光発電の導入量を一気に拡大できる。県の農政水産部は2014年11月から1年以上をかけて、ため池の1つ「吉野大池」で実証実験に取り組んだ(図10)。
1枚の発電能力が255W(ワット)の太陽光パネル24枚を組み合わせて、池の3カ所に設置した。水上に浮かべるフロートの種類を変えて、発電量や耐久性、導入コストを比較する。太陽光パネルの一部は設置角度を3通りに分けて発電量の違いを検証した。
3カ所を合計した年間の発電量は2.3万kWhで、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は国内の標準を上回る14.3%になった。太陽光パネルは光を受けて温度が上昇すると発電量が低下する特性があるが、水上に設置したことでパネルの温度上昇を抑えられた。
フロートの種類による発電量の差はほとんどなく、一方で耐久性とコストの面では一長一短が見られた。パネルの設置角度は30度・12度・5度の順に発電量が多かったが、角度を大きくするためには隣接するパネルに影ができないように設置間隔を広くとる必要がある。こうした実証結果を参考にしながら、県内に数多くある農業用ため池に水上式の太陽光発電を普及させていく。
すでに高松市にある「新池」では、水上式のメガソーラーを建設するプロジェクトが進んでいる。日本で初めて水上式メガソーラーを埼玉県で稼働させたウエストグループが、高松市から池の一部を借り受けて1万枚の太陽光パネルを設置する計画だ。発電能力は2.7MWを予定している。この水上式メガソーラーが運転を開始すれば、各地のため池に波及していく期待がふくらむ。
2015年版(37)香川:「市民が広げる太陽光発電とバイオマス、産業とエネルギーを地域循環型に」
2014年版(37)香川:「塩田やため池を発電所に、うどんバイオマスも進展」
2013年版(37)香川:「うどん県が挑むバイオマス発電、ようやく広がる太陽光」
関連記事
- ため池密度日本一の香川県に、日本最大級の水上太陽光発電所建設へ
香川県はため池の数が日本で3番目、面積当たりのため池数では日本一の県である。そんなため池を有効活用する、日本最大級の水上式メガソーラーの建設が決定した。 - ため池の太陽光発電は30度の傾斜が効果的、年間の発電量1.3倍に
太陽光発電の新たな導入方法として、ダムや池の水面を利用した水上式が注目を集めている。農業用のため池が1万5000カ所もある香川県では、1年間かけて実証実験を続けて効果を検証した。ため池の水面に浮かべるフロートの形式や太陽光パネルの設置角度の違いによる発電量を比較している。 - 自立できるバイオマスエネルギーへ、全国6カ所で事業性を評価
地域に適したバイオマスエネルギーの利用拡大に向けて、資源の調達からエネルギーに変換して利用するまでのシステムを事業として成り立たせる点が大きな課題だ。政府は7年間に100億円超の予算を投じて全国各地のシステム構築を支援する。新たに6つのテーマで事業性の評価を開始する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.