離島で地熱発電を増強、八丈島:自然エネルギー(2/2 ページ)
八丈島では東京電力が運営する地熱発電所が活躍している。2022年度をめどに、より出力を高めた地熱発電所をオリックスが建設・運営する計画だ。
硫化水素の抑制が必須条件
八丈町は地熱発電の事業者を公募する際、さまざまな条件を示している。なかでも事業スキームと、臭気対策、地域貢献の取り組みの3つが重要なのだという。
今回の事業は、オリックスが資金を調達し、地熱発電所を建設する形で進む。現時点では八丈町は予算措置を講じていない。固定価格買取制度(FIT)を利用してオリックスが利益を上げ、発電した電力は東京電力の送電線経由で島中に送られる。
臭気対策とは熱水に含まれている硫化水素(H2S)の処理をいう。臭気対策については住民からも要望が強いのだという。
現在稼働中の地熱発電所では水酸化マグネシウム吸収法を用いた硫化水素対策用の装置が稼働している。だが、よりきめ細かな対応を求めた。非発電時などにも効果がある手法を取り入れ、臭気に関する情報公開を求めた。オリックスは全量地下還元システムを導入することで、硫化水素の濃度を0ピーピーエム(ppm)に抑えることをうたっている。
熱供給も可能に
「公募の要項には地域貢献の取り組みを評価する項目がある。例えばさまざまな用途に利用可能な温水の供給だ。温水をどのように利用するのかは決まっておらず、公募では水量などの試算結果のみを求めた」(同課)。提案によれば、利用可能な温水の温度は42.8度、流量は1時間当たり1000トンだ。
今回の発電所ではシングルフラッシュ方式の地熱発電を想定している(図2)。現在の八丈島地熱発電所が採用する方式だ。日本国内のほとんどの地熱発電所も同方式を採用している。
図2 シングルフラッシュ方式の機器構成 現在の八丈島地熱発電所では気水分離器から得た熱水と冷却水の一部を熱水ピットに入れたのち、還元井を通じて地下に戻している 出典:石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
シングルフラッシュ方式では地中深く、キャップロックを超えて差し込んだ生産井から熱水と蒸気の混合物を得る。
その後、気水分離器で混合物を熱水と蒸気を分離する。これは回転するタービンのブレードに水が当たると破損の原因となるからだ。既存の八丈島地熱発電所では気水分離器を通過後の蒸気の温度は約170℃、圧力は0.69メガパスカル(MP、大気圧の約7倍)だ。
発電後の蒸気を冷却水との熱交換によって温水に変え、熱交換機に通じて冷却水に変える。余分な温水はさきほどの熱水とともに還元井を通じて地中に返す。地熱発電で用いる水はもともとは雨が水にしみこんだもの。還元井で地中に戻すことで、水量が不足することを防いでいる。
【訂正】 記事の掲載当初、4カ所で不正確な記述がありました。1ページ目の注1で「同発電所の構内には出力500kWの風力発電所が併設されている」としていましたが、同施設は現在撤去されています。同4段落目で「現有施設の拡張は難しいものの」としておりましたが、これは「現有施設の維持は難しいものの」の誤りでした。同6段落目に「既設の地熱発電所と同じ地下の熱源を利用できるのであれば」としておりましたが、八丈町企画財政課によれば「既設の地熱発電所と同じ場所で各種調査を速やかに実行できれば」の誤りでした。2ページ目の5段落目に「温水をどのように利用するのか、具体的な用途は定まっていないものの、オリックスからは提案があった」とあるのは「温水をどのように利用するのかは決まっておらず、公募では水量などの試算結果のみを求めた」の誤りです。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。
【追加情報】東京電力パワーグリッドによれば、八丈島地熱発電所の建設段階の生産井の本数は3本、運転開始時に1本を廃止し、2003年にさらに1本を廃止している。「定格出力は当初から3300kWのまま変えていないものの、実際の最大出力は低下する傾向にある」(同社)。(2017年1月18日、訂正と追加情報を同時に更新)
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