30MWの洋上浮体風力、アブダビの資金を確保:自然エネルギー
アブダビMasdarとノルウェーStatoilは、世界最大規模だと主張する浮体式洋上風力発電所Hywind Scotlandプロジェクトにおいて、今後共同で事業を進めると発表した。2017年内にも英スコットランド沖合で30メガワット(MW)の送電が始まる予定だ。
ノルウェーのエネルギー企業であるStatoil(スタトイル)*1)が英スコットランド沖で進める英国初の浮体式洋上風力発電プロジェクト「Hywind Scotland」(図1)。ここにアラブ首長国連邦アブダビのMasdar(マスダール)が資金を投入した。開発リスクが分散し、事業がより円滑に進みそうだ。
Masdarは2017年1月17日、ADSW 2017(Abu Dhabi Sustainability Week 2017)において、Hywind Scotlandの権益(株式)のうち25%をStatoilから取得したと発表した。同社はアブダビの自然エネルギー都市Masdarを手掛けている他、太陽光発電など再生可能エネルギーを利用したさまざまな巨大プロジェクトに出資している*2)。
*1) 同社は英国向けのエネルギー供給において重要な位置にある。英国に供給される天然ガスのうち、20%を担っているからだ。
*2) Masdarは英国内で出力402MWのDudgeon風力発電所をStatoilと共同で開発している。Masdarは英国東南部に位置する世界最大の固定式洋上風力発電所London Array(2013年に完成、合計出力630MW)にも出資している。
水深100メートルの海面で30MWを得る
Hywind Scotlandは、2015年11月に建設開始が発表されたプロジェクト(図2)*3)。スコットランド北東部の海岸(アバディーンシャー州ピーターヘッド)から約24キロメートル(km、15マイル)離れた北海の海面上に風力発電用タービンを5基並べる。利用する海面の面積は約4平方km。
*3) Statoilはガスや石油の海洋掘削プラントに実績があり、今回のプロジェクトに先駆けてノルウェー南部のKarmøy島(後述するStord市の南約60kmに立地)沖の水深約200mの地点において過去6年間、Hywind技術のプロトタイプ(出力2.3MW、1基)の検証を続けてきた。2014年には日立造船と技術提携を結んでいる。
Statoilによれば、固定式と浮体式の住み分けはこうなる。水深20〜50mまでは固定式にコスト優位性がある。それ以上の水深では、固定式の建設コストが急増する。浮体式であれば、タービンを載せたタワーを海底に固定しないため、遠浅の海岸でなくても設置できるとした。
Hywind Scotlandの立地では水深が95〜120mに達する。今回のプロジェクトの目的は商業規模の浮体式洋上風力発電の費用対効果が高く、リスクが低いことを実証することにある。
建設予定地の平均風速は約10m/秒であり、ドイツSiemensが製造する出力6MWのタービンを用いることで、30MWの電力を得ることができるという。同社によれば、約2万世帯に電力を供給可能だ。
風力発電用のタワーを現在スペインで製造中。2017年春にノルウェー南部のStord市に立地する工場に輸送して周辺装置を取り付け、2017年夏に現地へ運搬する計画だ。2017年後半に操業を開始する予定。
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