風力発電が2016年度に30万kW増加、過去7年間で最大の伸び:自然エネルギー(2/2 ページ)
震災後に伸び悩んでいた風力発電の導入量が再び拡大し始めた。2016年度の新規導入量は30万kWに達して、前年度から倍増する勢いだ。秋田県や島根県で大規模な風力発電所が運転を開始したほか、福島県の沖合では浮体式による3基目の洋上風力発電設備が実証運転に入る。
2020年代の前半に1000万kW突破へ
全国10地域の電力会社別に累積の導入量を比較すると、青森・秋田・福島の3県を中心に東北が圧倒的に多くて893MWに拡大した(図6)。次いで鹿児島県をはじめ九州の導入量が500MWに近づいた。さらに北海道・東京・中部・中国の4地域でも300MWを超えている。
日本風力発電協会によると、2015年12月末の時点で環境影響評価の手続きを進めているプロジェクトが全国で7640MWあった。これに2016年度末の累積導入量(3378MW)を加えると1.1万MWに達する。手続き中のプロジェクトがすべて計画どおりに運転を開始するわけではないものの、2020年代の前半には累積導入量が1万MW(1000万kW)を超える可能性が大きい。
政府が2010年に策定した「2030年のエネルギー需給の姿」では、風力発電の導入量を1000万kWで想定していた。この想定値を上回る規模で拡大して、2030年のエネルギーミックス(電源構成)の目標に設定した発電電力量(182億kWh)を大幅に超えることは確実だ(図7)。
海外では大規模な水力発電を除いた再生可能エネルギーの中で、風力発電の導入量が最も多い。2015年末の全世界の累積導入量は40万MWを突破した(図8)。日本の導入量の100倍以上もある。市場の拡大に伴って2010年から風力発電のコストが一段と低下した効果は大きい。
これに対して日本の風力発電のコストは1.6倍も高く、今後の拡大に向けてコスト低減が最大の課題になっている。2030年までに現在の世界の水準まで引き下げることが国の目標で、海外よりも割高な風車・工事費・運転維持費のいずれも削減する必要がある。
国内で導入した風力発電設備をメーカー別に見ると、65%以上を海外のメーカーが占めていて、一方で日本のメーカーは3社に絞られている(図9)。直近の1年間では日立製作所+富士重工業が導入量を112MWも伸ばした。福島沖で試運転中の「ふくしま浜風」も日立製の5MW機である。
風車のコストを削減するためには、国内メーカーが競争力のある製品を投入してシェアを伸ばしていくことが求められる。政府は風力発電の環境影響評価の手続きを従来の3〜4年から半減させて、運転開始までの期間を短縮する方針だ。コストの低下と開発期間の短縮によって、日本の風力発電の導入量はさらに伸びていく。
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