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人工光合成で先頭を走る、廃棄物発電とバイオガスのCO2で藻類を培養エネルギー列島2016年版(41)佐賀(2/3 ページ)

バイオマス産業都市を目指す佐賀市で人工光合成の実証プロジェクトが2カ所で始まった。清掃工場では廃棄物発電に伴うCO2、下水処理場では汚泥のバイオガスからCO2を分離・回収して、人工光合成で藻類を培養する試みだ。佐賀県の北部の日本海沿岸では陸上と洋上で風力発電の計画が進む。

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下水のバイオガスを発電と人工光合成に

 もう一方の「佐賀市下水浄化センター」では、下水の汚泥を発酵させたバイオガスに含まれるCO2を分離・回収して再利用に取り組む。バイオガスからCO2とメタンを分離・回収する設備を導入した(図4)。さらに回収したCO2を使って微細藻類の「ユーグレナ」を培養する施設を併設して、人工光合成によるユーグレナの培養を2016年2月から続けている。ユーグレナは健康食品やジェット燃料の原料になる。


図4 「佐賀市下水浄化センター」のCO2分離・回収・利用設備(画像をクリックすると拡大)。出典:東芝

 微細藻類の培養と合わせて、同時に回収したメタンを燃料に発電して施設内に電力を供給している。このほかにバイオガスを生成した後の液体から肥料を作って農業にも生かす(図5)。地球温暖化の原因になるCO2を削減しながら、地域の産業を活性化する狙いがある。


図5 バイオガスからCO2を分離・回収して利用する流れ(画像をクリックすると全体を表示)。出典:東芝

 佐賀県の再生可能エネルギーは太陽光発電を中心に、今後も風力発電やバイオマス発電の拡大が期待できる。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は80万kWに達した(図6)。すべての発電設備が運転を開始すると、県内の家庭(32万8000世帯)が使用する電力を100%再生可能エネルギーで供給できるようになる。


図6 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 活発に導入が進む太陽光発電のうち、すでに運転を開始した設備は合計で300MWを超えている。発電能力が1MW以上のメガソーラーだけでも県内の40カ所以上に拡大した(図7)。各地に分散する発電設備を生かして、再生可能エネルギーの地産地消を推進できる。


図7 佐賀県内のメガソーラー(2015年9月末時点)。出典:佐賀県産業労働部

 新たに大規模なメガソーラーの開発プロジェクトも始まった。佐賀県で最も北側にある唐津市の山中に、伊藤忠商事と九電工が共同で県内最大の21MWのメガソーラーを建設中だ。32万平方メートルの用地に7万5000枚の太陽光パネルを設置して2018年4月に運転を開始する。年間の想定発電量は2400万kWhになり、6600世帯分の電力を供給できる。唐津市の総世帯数(5万世帯)の1割強に相当する。

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