人工光合成で先頭を走る、廃棄物発電とバイオガスのCO2で藻類を培養:エネルギー列島2016年版(41)佐賀(3/3 ページ)
バイオマス産業都市を目指す佐賀市で人工光合成の実証プロジェクトが2カ所で始まった。清掃工場では廃棄物発電に伴うCO2、下水処理場では汚泥のバイオガスからCO2を分離・回収して、人工光合成で藻類を培養する試みだ。佐賀県の北部の日本海沿岸では陸上と洋上で風力発電の計画が進む。
陸上・洋上ともに風力発電の適地
日本海に面した唐津市は年間を通して強い風が吹くため、風力発電にも適している。海岸線から2キロメートルほどの距離にある山間部では、大規模な風力発電所の建設計画が進行中だ(図8)。大型の風車8基を設置して最大で28MWの発電能力を想定している。
九州電力グループの九電みらいエナジーが実施するプロジェクトで、建設工事に先立つ環境影響評価の手続きを2016年3月に開始した。順調に進むと2018年内に手続きを完了して工事に入ることができる。早ければ2020年に運転を開始できる見通しだ。
唐津市の沿岸部には年間の平均風速が7メートル/秒を超える場所が多い(図9)。平均風速が7メートル/秒になると、風力発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は30%を上回る。計画中の風力発電所は年間に最大7000万kWh以上の電力を供給できる可能性がある。2万世帯分の使用量に匹敵する規模で、唐津市の総世帯数の4割をカバーできる。
陸上だけではない。唐津市の北側に浮かぶ加部島(かべしま)の沖合では、産・学・官の連携で洋上風力発電の実証プロジェクトを検討中だ(図10)。水深が40〜50メートルの海域を対象に風力発電を展開するのと同時に、潮の流れを利用して潮流発電にも挑む。
この海域では風力と潮流を使って発電できるハイブリッド型のシステムの導入に取り組んだことがある。浮体式の基礎部分の上に水平方向に回転する風車を搭載する一方、水中でも潮流を受けて回転する水車を備えている(図11)。ところが2014年に加部島の沖合で設置工事を進めている途中で、悪天候による強風と高波の影響で沈没してしまった。
これに続く新しい発電システムの開発計画は明らかになっていないが、対象の海域の水深が50メートル以下で浅いことから、海底に固定する着床式で導入することも可能だ。潮流発電でも設備を海底に固定する方式がある。県内外の産・学・官が集まって2015年12月に発足した「佐賀県海洋エネルギー産業クラスター研究会(J☆SCRUM)」の活動を軸に、洋上風力発電と潮流発電の実用化を推進していく。
2015年版(41)佐賀:「バイオマス発電+人工光合成で一歩先へ、海洋エネルギーの挑戦も続く」
2014年版(41)佐賀:「ごみと下水から電力・熱・水素を地産地消、排出するCO2は植物工場に」
2013年版(41)佐賀:「イカの本場で潮流+風力発電、近海に浮かぶ水車と風車が電力を作る」
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