太陽光と蓄電池でVPP、大阪と大分の2拠点を統合制御:エネルギー管理
ダイヘンは自社施設に太陽光発電システムと蓄電池を導入し、バーチャルパワー・プラントをを構築する実証に着手した。大阪と大分の離れた2拠点のシステムを統合制御し、工場の電力消費のピークカットやデマンドレスポンス、非常時の自立運転など、さまざまな状況に応じた最適な運転状況を検証していく。
ダイヘンは複数の電源を統合制御するバーチャルパワープラント(以下、VPP)の構築実証を開始した。新たに大分県杵築市にある子会社のダイヘンテックの施設に太陽光発電と蓄電池を導入。既に太陽光発電や蓄電池を導入済みの大阪市内にある事業所と併せて、複数拠点の電力供給を独自開発のシステムでまとめて制御する。
ダイヘンはこれまで太陽光発電用パワーコンディショナー(PCS)で培ってきたインバータ制御技術を活用し、2016年2月に太陽光発電と蓄電池を組合わせた変電設備パッケージ「DISOLA POWER STRAGE PACK」、同年12月には大容量蓄電池用パワーコンディショナを発売し、工場やビル向けのエネルギーマネジメントシステム用途の製品ラインアップを拡充している。
ダイヘンテックに新たに導入したのは、出力102kW(キロワット)の太陽光発電システムと、容量250kWh(キロワット時)と80kWhの2つの蓄電池システムだ。これらの設備と大阪市淀川区にあるダイヘンの「十三事業所」に導入している出力82kWの太陽光発電システムと容量200kWhの蓄電池をまとめて制御する。それぞれの拠点で実際に稼働する工場の電力消費のピークカットやデマンドレスポンス、非常時の自立運転など、さまざまな状況に応じた最適な運用方法を検証していく狙いだ。
離れた2拠点の制御に活用するのは、ダイヘンが独自開発した「Synergy Link」というシステムだ。Synergy Link」は従来型の集中管理制御のように高機能な中央管理制御装置を使用することなく、クラウドなどの上位系装置からシステム全体の出力合計値を目標値に誘導するための指示を各機器に行う。これにより各機器が指示内容と制約条件から自律的に出力値を決定し、結果的にシステム全体の出力状態を最適に保つことができるという。
従来の集中管理制御によるシステムは、中央管理制御装置が各機器の目標値を決定するために、中央管理制御装置と各機器との相互通信および複雑かつ高速な制御演算が必要になる。このために導入時に高額な投資を行った後でも、設備増設時には情報量が増加し、結果として通信インフラの増強や大幅な制御ソフトの変更が必要となり、機器の増設・構成変更等が困難になる場合もある。
需要家に設置されるさまざまな機器の統合制御を行うVPP構築においても、従来の集中管理制御では導入管理、拡張に膨大なコストが見込まれるが、Synergy Linkはこうしたコストを削減できるとしている。
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