国内初の水力発電100%料金プラン、ソニーと三菱地所が東京電力から購入:自然エネルギー(2/2 ページ)
日本で最大の水力発電事業を運営する東京電力グループが、国内で初めて水力発電100%の電気料金プラン「アクアプレミアム」を企業向けに4月1日から提供する。第1号の利用者はソニーと三菱地所の2社で、毎月の使用電力量に応じてCO2排出量ゼロの付加価値分を料金に上乗せして支払う。
大企業にも再エネ導入の機運
ソニーは2050年までに環境負荷をゼロにする「Road to Zero」を目標に掲げ、グループを挙げてCO2排出量や廃棄物の削減に取り組んでいる。その中で再生可能エネルギーの導入量を拡大してCO2排出量を削減する方針だ。再生可能エネルギーの電力による環境負荷価値を購入する「グリーン電力証書」を通じて、2015年度には年間で1800万kWhを超える電力量に相当する証書を購入した(図3)。
このほかにもCO2の排出削減量や吸収量を認証する「J-クレジット」を利用して、木質バイオマスを中心に全国25カ所のプロジェクトから再生可能エネルギーのクレジットを購入している。グリーン電力証書とJ-クレジットを合わせて、年間に3万5000トンにのぼるCO2排出量を削減した。新たに東京電力EPから水力発電100%の電力を調達して、再生可能エネルギーの導入量を拡大する。
三菱地所もソニーと同様に、大手企業の先頭を切って再生可能エネルギーの導入に取り組んでいる。東京電力EPのアクアプレミアムを利用する新丸の内ビルディングでは、3年前の2014年4月から3種類の再生可能エネルギーによる電力の調達を開始した。岩手県内の木質バイオマス発電、東京都内の食品廃棄物によるバイオガス発電、千葉県内の太陽光発電を新電力から調達している(図4)。
新丸の内ビルディングの契約電力のうち5割を3種類の再生可能エネルギーによる電力でカバーする。需要が増加する昼間の時間帯を中心に再生可能エネルギーの電力を供給しながら、残りの5割は東京電力EPと契約して一定量を調達する体制だ(図5)。今後は東京電力EPが供給する電力の中でも、水力発電によるCO2フリーの再生可能エネルギーが増える。
東京電力EPが企業や家庭に供給する電力のCO2排出量は、2015年度に1kWhあたり0.491kg-CO2(CO2換算キログラム)だった。年間に100万kWhの電力を東京電力EPから購入した場合には、CO2排出量が491トンになる。アクアプレミアムでCO2フリーの電力を購入するとCO2排出量がゼロになり、国や自治体に報告するCO2排出量の削減に生かせる。
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