市民共同発電所を保育所の跡地に、売電収入から2%を「ふるさと納税」:自然エネルギー(2/2 ページ)
大阪府の泉大津市で市民の共同出資による太陽光発電プロジェクトが始まる。市が所有する保育所の跡地を利用して、民間の事業者が発電所を建設・運営する。3月1日からファンドの募集を開始した。5月に運転を開始する予定で、売電収入のうち2%を「ふるさと納税」で市に寄付する。
2年前に稼働した市民共同発電所は順調
泉大津市内では同様の市民ファンドを活用して、2015年4月に「泉大津汐見市民共同発電所」が運転を開始した(図5)。NPO(特定非営利活動)法人の自然エネルギー市民共同発電が運営主体だ。市が所有する下水道施設の構内に、50kWの太陽光発電システムを設置した。稼働後の2年間に平均15%以上の高い設備利用率で発電を続けている。この市民共同発電所でも災害時には最大13.5kWの電力を非常用電源として利用できる。
泉大津市は大阪府の沿岸地域にあって平坦な場所が多く、市内の標高差は最大で18メートルしかない(図6)。徒歩や自転車で移動しやすい利点を生かしながら、地域の自然と環境を大切にする「エコ・コンパクトシティ」を目指している。平坦な土地を生かせる太陽光発電を中心に再生可能エネルギーを増やす方針だ。住宅用の太陽光発電システムの補助金制度も続けている。
新しい街づくりに向けて市民3000人を対象に市が実施したアンケート調査によると、福祉や教育と並んで防災対策と環境保全を重視する傾向が見られる(図7)。しかし市の政策に対する市民の満足度は低めで、対策の強化が求められている状況だ。
環境保全の面では、市民の7割以上がエネルギーと地球温暖化の問題に関心を示した。泉大津市では関心度を高める目標を掲げて、2024年までに住宅用の太陽光発電システムの導入件数を大幅に伸ばす方針だ(図8)。新設する市民共同発電所では、収益の一部を使って子供たちに環境教育を実施することも協定の中に盛り込んだ。
一方で関西電力が遠く離れた福井県の原子力発電所を再稼働させる準備を着々と進めている。市民の共同出資による小規模・分散型の太陽光発電所は、大規模・集中型の原子力発電所と対照的だ。地元の太陽光発電所の収益を使って環境教育を受ける子供たちに、その違いを理解してもらえるだろうか。
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