「市民がつくる」風力発電所、湾岸から石狩市の家庭5割に電力を:自然エネルギー
北海道を拠点に市民参加型の風力発電事業を展開する「市民風力発電」が大規模な開発プロジェクトを石狩市で推進している。港湾地区に9基の大型風車を設置して、石狩市の全世帯が使用する電力の5割相当を供給する計画だ。環境影響評価の手続きを経て2017年12月に運転を開始する。
風力発電所を建設する場所は日本海に面した「石狩湾新港」の工業団地の中にある(図1)。この港湾地区では札幌市の中心部から近い立地を生かして、北海道の物流拠点の役割を担う一方、LNG(液化天然ガス)の輸入基地を中核にエネルギーの供給拠点として発展させる構想が進んでいる。
北海道を中心に12カ所の風力発電所を運営している「市民風力発電」が発電事業者になって、湾岸に「石狩コミュニティウインドファーム」を建設する計画だ。1基あたりの発電能力が2.3〜3.3MW(メガワット)の大型風車を最大9基まで設置して、合計で20MWの発電規模を想定している(図2)。
石狩湾には日本海からの風が年間を通して吹き、風車の中心部にあたる地上70メートルの高さでは平均風速が7メートル/秒を超える。風力発電には絶好の立地で、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は標準値の20%を上回る28%を見込んでいる。年間の発電量は4900万kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(3600kWh)に換算して1万3600世帯分に相当する。石狩市の総世帯数(2万7000世帯)の5割をカバーすることができる。
現在は4段階に及ぶ環境影響評価のうち3段階目の「準備書」の手続きを進めているところで、1年以内に全体の手続きを完了する見通しである。並行して地域の金融機関や市民ファンドなどを通じて建設資金を調達する。着工は2016年6月、運転開始は2017年12月を予定している。
石狩湾新港には北海道ガスがLNGの輸入基地を建設中で、隣接する場所に北海道電力が初めてのLNG火力発電所を2019年から運転する計画だ。風況の良さを生かして風力発電を拡大しながら関連産業を誘致するプロジェクトも始まっている(図3)。
このプロジェクトを推進する「石狩湾新港管理組合」は洋上でも風力発電を実施するために事業者を公募中で、9月までに候補者を選定する。将来は風力発電の電力から水素を製造して、石狩湾新港から国内の各地に水素を供給する構想もある。
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