コスト低減のカギはIoT、自己診断する1500V級パワコン:太陽光(2/2 ページ)
シュナイダーエレクトリックは「スマートエネルギーWeek 2017」に出展し、国内初投入となる太陽光発電向けの新製品を披露した。自己診断機能を備えるパワコンなど、IoTを強みにコスト低減や安定稼働ニーズが高まる国内市場を開拓していく方針だ。
1500V×IoTを強みに
もう1つの新製品が直流入力電圧1500Vに対応する、定格出力2MWの太陽光発電向けパワーコンディショナー「Conext SmartGen」だ。2台をコンテナに格納し、その中に特別高圧機器、変圧器も併設した形で提供する。各機器の配線を事前に準備した状態で提供する仕組みだ。2018年中の納入を目指すとしている。また、製品保証も30年と長期なのが特徴だ。
改正FIT法の施行や「固定買取価格制度」による買い取り価格の引き下げなど、転機を迎えている国内の太陽光発電市場。Schneider Electricのソーラーおよびエネルギーストレージ事業部門担当バイスプレジデントを務めるArnaud Cantin氏は「日本の太陽光発電事業者や投資家には大きなプレッシャーがかかっている状況にあるといえるだろう。既に建設した発電所を効率よく稼働させるのと同時に、安定的な運用に必要なメンテナンスコストを低減していく必要もある」と述べる。
また、シュナイダーエレクトリックのソーラー部門で日本・北アジア責任者であるDaniel Chua氏は「短期的な視点で発電所の建設に必要なコストを削減しても、長期的にはROI(投資収益率)が下がる可能性も高い。太陽光発電所は20年、30年後も利用していくという長期の視点が非常に重要だ」と語る。
その中で同社が投入する製品群の大きな強みとするのがIoTの活用だ。例えばConext SmartGenは、運転状況やメンテナンスの履歴をクラウド上に保存し、自己診断を行う機能を備える。メンテナンス警告や故障報告を自動で送信する仕組みだ。「これにより必要な時だけメンテナンスを行うといった予知保全が可能になるため、運用コストを大きく削減することができる」(Cartin氏)
Conext SmartGenでは、1500V化による送電効率の向上、パワーコンディショナーの大容量化による設置台数の削減が寄与する建設コストの削減、さらにはIoTを活用した長期的な運用コストの削減という3つのメリットを武器に太陽光発電市場の開拓を狙う方針だ。こうしたコスト低減への貢献を強みに、既に日本より太陽光発電の売電単価が低い海外地域への導入実績も広がっているという。
シュナイダーエレクトリックで日本の太陽光発電市場に2013年6月から本格参入して以降、これまでに合計400MW以上への製品導入の実績がある。これまでは主にパッケージ型変電所「PV-BOX」を中心に展開してきた。2017年からは新製品の投入を機に、太陽光発電所に加えて、今後拡大していくと見られるマイクログリッドもターゲットに市場開拓を進めていく方針だ。
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