石炭火力発電で木質バイオマス30%混焼、CO2排出量はLNG火力の2倍弱:電力供給サービス(2/2 ページ)
四国電力と住友商事が宮城県の臨海工業地帯で石炭火力発電所を建設する計画に着手した。石炭に木質バイオマスを30%混焼させてCO2排出量を大幅に低減する方針だが、それでもLNG火力発電の2倍近い排出量になる。2021年度に運転を開始する予定で、地域の復興にも貢献する狙いがある。
関西電力グループも同じ港で建設中
環境省がまとめた石炭火力とLNG(液化天然ガス)火力のCO2排出係数を見ると、現在の石炭火力で最先端のUSC(超々臨界圧)を採用した場合に、電力1kWh(キロワット時)あたりのCO2排出量は0.81〜0.84キログラムになる(図5)。これに対して木質バイオマスを30%混焼することにより、CO2排出量を0.6キログラム/kWhまで低減できると想定している。木質バイオマスによるCO2吸収分を排出量から相殺できるためだ。
それでもLNG火力と比べれば、CO2排出量は依然として高水準である。従来型のLNG火力の1.45倍、最新型のガスタービン複合発電の2倍近い排出量になる。政府は国全体の発電に伴うCO2排出係数を2030年度に0.37キログラム/kWhまで低減することを目標に掲げているが、その水準と比べても明らかに多い。
ただし仙台市に火力発電所を建設することによって、地域の経済を活性化できるメリットも見過ごせない。仙台塩釜港の中で建設予定地になる仙台港区では、東日本大震災で岸壁のエプロン(上面)が沈下するなどの被害を受けた(図6)。その岸壁も復旧して通常どおり使用できる状態になっている。
混焼発電の燃料に使う石炭と木質ペレット(木材のくずなどを粒状に圧縮した固形燃料)は海外から輸入する。石炭は年間に25万トン、木質ペレットは15万トンを予定している。輸入した燃料の揚げ荷作業を含めて、発電所の運転に必要な雇用を新たに生み出すことができる。建設時には地元の企業に対する工事の発注も見込める。
すでに仙台港区では関西電力グループと伊藤忠グループが共同で石炭火力発電所の建設工事を進めている。発電能力は同規模の11万2000kWで、2017年10月に運転を開始する予定だ。このプロジェクトは火力発電が仙台市の環境影響評価の対象に加わる以前に着工している。
震災からの復興と地域の環境対策、さらに国全体の温暖化対策の観点から、石炭火力発電所の建設には複合的な判断が求められる。新たに始まった石炭バイオマス混焼発電所の建設計画を市と住民がどう判断するのか。国のエネルギー政策にも影響を与える可能性がある。
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