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台風に負けない風力発電に挑戦、バイオマスで島のCO2を減らすエネルギー列島2016年版(47)沖縄(2/4 ページ)

猛烈な台風が襲う沖縄県では発電設備にも対策が必要だ。強風に耐えられる世界初の風力発電機の実証実験が沖縄本島の南部で始まり、風速30メートル/秒の台風が接近した時でも発電を続けた。島内で生まれる廃食用油や下水汚泥を活用したバイオマス発電によるCO2削減の取り組みも広がる。

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本島の全域から天ぷら油を回収して発電

 再生可能エネルギーでCO2を削減する取り組みはバイオマスでも活発になってきた。沖縄本島の中部に位置する沖縄市で、使用済みの天ぷら油(廃食用油)を利用したバイオマス発電設備が2016年6月に運転を開始している(図5)。廃食用油のリサイクルを推進する大幸産業が沖縄市の本社に設置した。


図5 バイオマス発電装置の外観(画像をクリックすると拡大)。出典:大幸産業

 2基の発電機で合計320kWの電力を供給できる。1日24時間の連続運転で年間に340日の稼働を予定している。年間の発電量は261万kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して725世帯分に相当する。

 このうち発電設備で消費する電力を除いた254万kWhを固定価格買取制度で沖縄電力と新電力に供給している。廃食油を利用したバイオマス発電の買取価格は1kWhあたり17円(税抜き)になるため、年間で4300万円の売電収入を見込める。

 燃料になる廃食用油は島内のスーパーマーケットや飲食店、学校給食センターのほか、家庭からもトラックを使って回収する(図6)。回収の対象地域は沖縄本島の北部から南部までほぼ全域をカバーしている。廃食用油のリサイクルにかける意気込みの大きさがうかがえる。


図6 廃食用油を回収するトラック。出典:大幸産業

 発電に利用する廃食用油は1日あたり2200〜2500リットルにのぼる。回収後は加熱脱水などによって不純物を取り除いてから発電機に投入する(図7)。発電機は電力のほかに温水も供給できるコージェネレーション(熱電併給)システムで、廃食用油の加熱に温水を利用してエネルギー効率を高めている。


図7 廃食用油を精製する設備(画像をクリックすると拡大)。右の丸いタンクで廃食用油を加熱脱水、左の丸いタンクに精製済みの燃料を貯蔵して発電機へ供給する。その隣の四角いタンクには発電機から出る温水を貯蔵。出典:大幸産業

 大幸産業は新たに500kWの発電機を追加で導入して、廃食用油を利用したバイオマス発電の規模を拡大する計画だ。固定価格買取制度の認定を取得したうえで2017年10月をめどに運転を開始する。発電能力が現在の2.5倍になり、廃食用油と再生可能エネルギーの地産地消を加速させる。

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