検索
連載

台風に負けない風力発電に挑戦、バイオマスで島のCO2を減らすエネルギー列島2016年版(47)沖縄(3/4 ページ)

猛烈な台風が襲う沖縄県では発電設備にも対策が必要だ。強風に耐えられる世界初の風力発電機の実証実験が沖縄本島の南部で始まり、風速30メートル/秒の台風が接近した時でも発電を続けた。島内で生まれる廃食用油や下水汚泥を活用したバイオマス発電によるCO2削減の取り組みも広がる。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

下水処理場に広がるバイオガス発電

 廃棄物を活用した発電設備は下水処理場にも広がってきた。沖縄本島にある9カ所の下水処理場のうち、これまでに3カ所でバイオガス(消化ガス)を利用した発電設備が稼働している。県内で最大の下水処理能力を誇る那覇市の浄化センターで1984年に稼働したのが最初だ。2016年に入ってから具志川市(ぐしかわし)と宜野湾市(ぎのわんし)の浄化センターでも相次いでバイオガス発電設備が運転を開始した(図8)。


図8 バイオガス発電設備を導入した浄化センター。具志川(左)、宜野湾(右)。出典:沖縄県土木建築部

 発電能力は新規に導入した2カ所を合わせて1800kWに達する。年間の発電量は830万kWhになって一般家庭の2300世帯分に相当する。下水を処理する浄化センターは沖縄県が運営しているが、発電事業は公募を通じて民間企業に委託した。沖縄県は発電設備の建設・運営にコストをかけずに、バイオガスの提供料と発電設備の土地使用料を事業者から得ることができる(図9)。


図9 「具志川浄化センター」のバイオガス発電事業スキーム。出典:NOSAバイオエナジー

 それぞれの浄化センターでは周辺地域から集まってくる下水のうち汚泥を抽出した後に、消化槽で汚泥を発酵させてバイオガスを作る(図10)。発酵には加温が必要になるため、発電時の排熱を利用している。コージェネレーションと同様の方法で、下水の汚泥から作った電力と熱を最大限に生かす。


図10 下水汚泥を利用したバイオガス発電のプロセス。出典:NOSAバイオエナジー

 離島でもバイオマスの活用に取り組んでいる事例がある。沖縄本島から南西に300キロメートル離れた宮古島だ。島内の木質バイオマスを使って電力と熱、さらに水素も作る「宮古市ブルーチャレンジプロジェクト」を2012年に開始した(図11)。ブルータワーと呼ぶ独特の方式によるバイオマス発電設備を導入する計画だったが、現時点では発電を見合わせて水素の製造に特化する方針だ。


図11 「宮古市ブルーチャレンジプロジェクト」の構想(2012年11月時点の当初計画、画像をクリックすると全体像を表示)。出典:宮古市市民生活部

 宮古島では太陽光発電が拡大した結果、季節によっては島内の供給力が需要を上回る可能性が高まっている。その場合には火力発電の出力を抑制したうえで、それでも供給力が余りそうな場合にはバイオマス、次いで太陽光・風力の順に発電設備の出力を制御するルールになっている。

 バイオマス発電は太陽光・風力よりも優先順位が高いため、出力制御が頻繁に発生する可能性がある。そのあいだは売電収入を得ることができなくなってしまうため、事業計画に大きな影響を及ぼす。水素ならば電力の需給状況に関係なく、タンクに貯蔵して必要な時にエネルギー源として利用できる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る