台風に負けない風力発電に挑戦、バイオマスで島のCO2を減らす:エネルギー列島2016年版(47)沖縄(4/4 ページ)
猛烈な台風が襲う沖縄県では発電設備にも対策が必要だ。強風に耐えられる世界初の風力発電機の実証実験が沖縄本島の南部で始まり、風速30メートル/秒の台風が接近した時でも発電を続けた。島内で生まれる廃食用油や下水汚泥を活用したバイオマス発電によるCO2削減の取り組みも広がる。
太陽光と蓄電池がマンゴーを守る
沖縄県の再生可能エネルギーは本島と離島を合わせて、太陽光・風力・中小水力・バイオマスの4種類が拡大中だ。その中でも固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模では太陽光が圧倒的に多い(図12)。
電力の需要が大きい那覇市を中心とする本島の南部では、太陽光発電の電力を地産地消するサービスが2016年10月に始まった。新電力の沖縄ガスニューパワーが提供するサービスで、最南端の糸満市にあるメガソーラーから電力を買い取って企業向けに販売する。
このメガソーラーはリゾートホテルを経営するパームロイヤルが遊休地に建設して運営している。1万8000平方メートルの用地に6000枚を超える太陽光パネルを設置した(図13)。発電能力は1.5MW(メガワット)で、本島の南部では最大級だ。太陽光発電でも台風の対策は必要になる。基礎部分を全面コンクリートで固めて耐風性を高めた。
2014年から運転を続けて、年間に165万kWhの電力を供給できる。一般家庭の450世帯分に相当する。沖縄ガスニューパワーは買い取った電力をパームロイヤルのホテルをはじめ複数の企業に提供中だ。沖縄電力よりも安い価格を設定して販売先を増やしていく。
離島の宮古島でもユニークな取り組みが見られる。宮古空港の貨物棟の屋根に太陽光パネルを設置して、2016年4月から電力の自給自足を開始した(図14)。発電能力は83kWで、年間に10万kWhの電力を供給できる見込みだ。一般家庭の27世帯分になり、貨物棟で消費する電力の8割を満たせる。
太陽光で発電した電力は蓄電池に貯めて、くもりや雨の日でも供給できる。貨物棟の中には、名産品のマンゴーなど高価な農産物を冷蔵で保管している。台風で停電が発生しても、蓄電池の電力を使って冷蔵庫を動かし続けることが可能だ。島の産業を脅かす台風の影響を再生可能エネルギーで回避していく。
2015年版(47)沖縄:「小さな離島で再生可能エネルギー7割へ、台風を避けながら風力発電と太陽光を」
2014年版(47)沖縄:「島のエネルギーをCO2フリーに、石油から太陽光・風力・バイオマスへ」
2013年版(47)沖縄:「海洋温度差で未来をひらく、離島の自給率100%へ太陽光と風力も加速」
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