再生可能エネルギー80%へ向かうドイツ、日本の蓄電池で電力を安定供給:エネルギー管理(2/2 ページ)
日本の最先端の蓄電技術を生かした実証プロジェクトがドイツで4月から始まる。風力発電所が数多く集まる北西部のニーダーザクセン州の沿岸部に大容量のリチウムイオン電池とナトリウム硫黄電池を設置して、地域の電力供給を安定化させる4通りの機能を3年間かけて実証する予定だ。
2023年の夏には再エネ100%の時間帯も
実証プロジェクトでは需給バランスを調整するために4通りの機能を使い分ける。需給状況に応じて30秒以内で自動的に応答する機能として「Primary Control Reserve供給」が第1の対策で、続いて送電事業者が指示して5分以内で応答する「Secondary Control Reserve供給」が第2段階の対策になる。
さらに「バランシング(Balancing)」の機能で複数の事業者間の需給状況を調整する。「無効電力(Reactive Power)供給」の機能を使うと、エネルギーとして利用できない電力を流して需給バランスを調整できる。2種類の蓄電池と4通りの電力安定化機能を組み合わせたシステムの有効性を実証して、ドイツ国内で普及を目指す。
ドイツ政府は電力の需給構造を再生可能エネルギー主体に転換するエネルギーヴェンデ政策のもと、風力発電と太陽光発電を急速に拡大してきた。2030年までに水力・地熱・バイオマスを含めて国全体の電力の50%以上を再生可能エネルギーで供給する計画だ(図7)。その一方で原子力は2022年までに全面的に廃止する。
図7 ドイツの発電設備規模(画像をクリックすると2000年から表示)。上から順に、水力、地熱、太陽光、バイオマス、風力、揚水式水力、その他、褐炭、無煙炭、ガス、石油、原子力。単位:ギガワット(=100万キロワット)。出典:dena
日本政府が掲げる2030年の電源構成の目標(再生可能エネルギー22〜24%、原子力20〜22%)と比べて大きな差がある。ドイツと日本のエネルギー政策に共通する最大の目的は火力発電の比率を引き下げてCO2(二酸化炭素)の排出量を大幅に低減することだが、放射能汚染に対する危機感に根本的な違いが見られる。
さらにドイツでは2050年までに再生可能エネルギーの比率を80%以上に拡大する方針で、そのために必要な施策に取りかかっている(図8)。送電・発電・消費・貯蔵の4つの分野で再生可能エネルギーの比率を高める施策を展開していく。日本のエネルギー産業と共同で取り組む実証プロジェクトは4つの分野すべてに関連する。
図8 ドイツの再生可能エネルギー(RE)の導入目標と主な施策。上から順に、送電(ネットワーク増強)、発電(融通性向上、RE導入加速)、消費(デマンドレスポンス)、貯蔵(熱転換、揚水式、水素ガス転換)。出典:dena
ドイツの研究機関が分析した2023年の電力需給の予測によると、冬のあいだは火力発電を中心とする従来型の設備を使って電力を供給する必要があるが、夏になると太陽光と風力発電が増加して日中には100%近い電力を再生可能エネルギーで供給できる見通しだ(図9)。その代わりに大容量の蓄電池システムなどを使って風力と太陽光の出力変動に対応する必要がある。
図9 ドイツの2023年の電力需給予測。左は冬の11月、右は夏の8月。赤い線は電力需要、灰色は火力など、黄色は太陽光、青色は風力(陸上/洋上)、水色は水力、緑色はバイオマス。GW:ギガワット。出典:dena
日本国内でも大容量の蓄電池システムを導入して、風力発電と太陽光発電の増加に備える動きは広がりつつある。ただしドイツと違って電力会社が再生可能エネルギーの拡大よりも原子力の再稼働を重視する姿勢を維持しているため、蓄電池による電力の安定供給に取り組む動きはさほど活発になっていない。ドイツの実証結果を日本にもフィードバックして、長期的な再生可能エネルギーの拡大策として生かしたいところだ。
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