東京電力の新々事業計画、2020年代の自立を目指すも道険し:電力供給サービス(2/4 ページ)
東京電力グループは2017年度から「新々総合特別事業計画」のもと、福島事業・経済事業・原子力事業の3本柱で変革を進めていく。国の改革案に沿って火力発電・送配電・原子力事業を他社と統合して競争力を高める方針だ。国有化の状態から脱却するために年間5000億円の利益創出を目指す。
火力発電の完全統合で中部電力と合意へ
新々総特で推進する施策のうち、発電事業と小売事業については具体的な取り組みが始まっている。火力発電では中部電力と共同でJERAの事業を拡大中だ。すでに既存の火力発電所を除いて、燃料の開発・調達から火力発電所の新設・リプレースまで両社の事業をJERAに統合した(図4)。
既存の火力発電所もJERAに統合する方向で、東京電力フュエル&パワーと中部電力が4月中に基本合意を締結する。世界でも最大級の火力発電事業会社になるJERAがスケールメリットを生かして国内と海外の双方で競争力を発揮していく。海外の発電事業は2030年までに3倍以上の規模に拡大する計画だ(図5)。国内の火力発電事業と合わせて収益を高められる期待は大きい。
火力発電事業を拡大させるために、最先端の技術を活用したプロジェクトにも取り込んでいく。三菱日立パワーシステムズと共同で、発電設備にセンサーを取り付けてインターネットによる遠隔監視サービスを展開する予定だ。センサーとインターネットを組み合わせたIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の技術を生かして、日本国内と東南アジアの発電事業者に遠隔監視サービスを提供していく(図6)。
新々総特には再生可能エネルギーの発電事業の拡大策も盛り込む。東京電力グループは関東を中心に164カ所の水力発電所を運転する国内最大の水力発電事業者である。水力発電事業は持株会社の東京電力HDと送配電事業者の東京電力パワーグリッドが共同で運営してきたが、2017年4月から東京電力HDのリニューアブルパワー・カンパニー(RPC)に一本化する(図7)。水力発電の業務をRPCに集約して今後の事業拡大に備える。
2020年4月に実施する発送電分離に伴って、RPCは日本最大の水力発電事業者として東京電力HDから独立する可能性が大きい。一方では小売事業を担当する東京電力エナジーパートナーが水力発電100%の電気料金プランをRPCの業務集約と同時に4月1日から提供開始する。すでにソニーと三菱地所に電力を供給することが決まり、今後も利用者を増やしていく。
水力に続いてバイオマス発電のプロジェクトにも着手した。バイオマスの分野で実績が豊富なJFEエンジニアリングと共同で、廃棄物・下水汚泥・木質バイオマスを生かして再生可能エネルギーの燃料化・発電事業を展開していく計画だ(図8)。東京電力フュエル&パワーの燃料調達や火力発電所の運営ノウハウも活用する。
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