世界初、走る電気自動車へワイヤレス給電に成功:電気自動車(2/2 ページ)
東洋電機製造は4月5日、東京大学大学院、日本精工と共同で、電気自動車が走行中に道路からワイヤレスで給電する仕組みを開発し、世界で初めて実車走行に成功したと発表した。インホイールモーターを活用したシステムで、実用化できれば電気自動車の普及課題の1つである“航続距離の短さ”を解決できる可能性がある。
一方で、EVの普及障壁の1つに、従来のガソリン車などに比べ充電一回での航続距離が短いという点が指摘されている。そこで航続距離を伸ばすため重いバッテリーを自動車に搭載すると、自動車を動かすのに必要なエネルギーが増えてしまう。その課題を解消するため、バッテリーの容量は必要最小限にして、走行中に足りない分のエネルギーを道路に設けたコイルからワイヤレスで送電して補うという「走行中給電」の実現に向けて、世界的に多くの研究が行われている。
従来の走行中給電の研究例の多くは、道路に設けたコイルから車体の底に装着した受電コイルに電力を送り、車載バッテリへ給電をするものだった。これまでの研究例では、現在市販されているEVと同様の車載モーターを使ったEVを想定しており、これはディファレンシャルギアなどの駆動装置を介するため機械的な伝達ロスが大きく、重量も増えてしまう。
それに比べ、インホイールモーターは発生したトルクを直接駆動力としてタイヤに伝達できるので、伝達ロスを極限まで減らすことが可能だ。また、先行研究で、駆動装置の重量を30〜40%軽くできることが示されている。そこで今回の研究では、道路のコイルから車体のコイルへ給電するのではなく、道路のコイルからインホイールモーターに直接、走行中ワイヤレス給電するというインホイールモーターに適した走行中給電の新しいかたちを提案した。
関連記事
- 高速走行「電気バス」、無線充電の効率86%
高速道路を走行する中型EVバスの実証走行を東芝が開始した。特徴は無線充電(ワイヤレス充電)を採用したこと。15分で充電を終え、1日当たり3回、川崎市と羽田空港を結ぶ。 - 電気自動車にワイヤレスで電力が流れる、車体から車輪へ10センチの距離
次世代の電気自動車を構成する技術の1つに「インホイールモーター」がある。車輪の内部にモーターを搭載して、エネルギーの損失が少ない電気自動車を作ることができる。車体側のバッテリーから車輪側のモーターに電線をつないで電力を供給する方式が一般的だが、新たにワイヤレスの技術が実用化へ向かう。 - 東芝のワイヤレス充電可能なEVバス、60%のCO2削減効果
東芝がワイヤレス充電システムを利用したEVバスの実証走行の成果を発表した。走行距離と消費電力などのデータをもとにCO2削減効果を計算したところ、中型のEVバスでは同じサイズのディーゼルバスと比較して約60%の削減効果があることが分かったという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.