電力系統監視制御システムの海外展開へ、東電PGや東芝など6社が提携:エネルギー管理
東京電力パワーグリッドや東芝など6社は、電力系統監視制御システムと周辺技術の海外事業展開に関する戦略的な提携を発表した。各社の技術を組み合わせた幅広いサービスの提供を目指す。
総合的なO&M事業の展開へ
東京電力パワーグリッド(以下、東電PG)や東芝など6社は2017年4月、電力系統監視制御システムと周辺技術の海外事業展開に関して戦略的な提携を行うことを発表した。東南アジアやアフリカなどにおいて、サービス提供先選定に向けた市場調査を開始し、将来的に「総合的なO&M(Operation and Maintenance)事業」を展開する。
6社は東電PGに加えて東芝、マカフィー、NTTデータ、東光高岳、日本工営である。これまでは、1社またはプロジェクトごとに複数社が協業して海外販売を進めてきた。業務提携で各社の持つ技術を組み合わせることで、幅広いサービスの提供が可能という。
東芝は電力系統監視制御システムにおいて国内トップクラスの納入実績があり、これまでに蓄積した技術と関連資産を活用し、高品質なインフラ整備に貢献していく。マカフィーはサイバーセキュリティ対策技術、NTTデータはクラウド環境の設計と運用技術、東光高岳は送配電設備などの開発、日本工営はシステム設計などを担う。
東電PGにおける次世代監視制御システムの取り組み
東電PGは次世代監視制御システムにおいて、OSIsoftのIoT情報基盤「PI System」を2019年3月から活用することで、設備保全のトータルコストを削減するとともに、電力のさらなる安定供給を目指すことを発表している。2016年12月発表当時の資料によると、米国における全発電設備の情報基盤で50〜60%のシェアを占めている。世界の電力、ガス、水道などのインフラ業界では1000社以上の導入実績があるとしている。
2016年3月には東芝が東京電力の次世代監視制御システムを受注したことを発表した。受注したのは、地方送配電系統の運用と遠方制御に関わる設備監視を一貫して実施するシステムであり、給電所10カ所と制御所56カ所を更新対象としている。
従来は各給電所や制御所に設置されていたサーバ群を1つの拠点に統合し、現在の業務品質を維持しながら、基幹系統から配電系統まで一貫した監視制御業務を可能とする。国際標準規格を採用して、高い相互接続性も実現。2018年から順次納入される予定だ。
東電PG広報担当者によると「これから導入するPI Systemを用いた次世代監視制御システムは、海外事業展開における商材の1つとして検討している」という。
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