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電力を「圧縮空気」で蓄電するシステム稼働、静岡県で再エネの出力変動対策に:自然エネルギー(2/2 ページ)
再生可能エネルギーで発電した電力を、圧縮空気として“蓄電”するという新しいシステムの実証が静岡県で始まった。NEDOプロジェクトとして早稲田大学、エネルギー総合工学研究所が実施するもので、再生可能エネルギーの新しい出力変動対策として期待がかかる。
風力発電の発電量予測技術を組み合わせる
今回行う実証実験のポイントは、実際の風力発電所を接続して圧縮空気蓄電システムを最適に制御していく点だ。東京電力ホールディングスが運営する「東伊豆風力発電所」と接続を行う。2015年8月から稼働を開始した、11基の風車を備える発電出力18.37MW(メガワット)の風力発電所だ。
圧縮空気蓄電システムの制御は、2つの方式を検証する。1つが風力発電の発電量予測情報に基づく変動緩和制御だ。これは電力系統に対する風力発電の出力変動の影響を緩和するために、蓄電システムの充放電を最適に制御していく技術である。
もう1つが計画発電制御だ。2016年4月に開始した「計画値同時同量制度」では、発電事業者などは前日および1時間前に30分1コマを単位とする発電計画を作成する必要がある。計画発電制御ではこの事前に用意した発電計画と実際の発電量との差を極小化するために、蓄電システムの充放電を制御していく。これらの制御技術は、早稲田大学が開発を行った。
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