下水汚泥の廃熱から電力を、B-DASH採択で技術の普及へ:省エネ機器
JFEエンジニアリングなどは、国土交通相の「平成29年度下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」に、3者で提案した発電型汚泥焼却技術が採択されたと発表した。
発電型汚泥焼却技術がB-DASHに採択
JFEエンジニアリングと日本下水道事業団、川崎市は2017年4月、国土交通省の「平成29年度下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」に、3者が提案した温室効果ガス削減を考慮した発電型汚泥焼却技術が採択されたと発表した。
国内の下水処理施設から排出される下水汚泥は、発生量の半分程度が焼却処分されているが、汚泥焼却施設では窒素分の燃焼によりN2O(一酸化二窒素、温室効果はCO2の約300倍)が多量に発生するため、温室効果ガス排出源の1つとなっている。
この課題を解決するためJFEエンジニアリングなどは、既存の焼却施設へ容易に追加可能な廃熱回収型高効率発電と局所撹拌(こうはん)空気吹込み(二段燃焼)の2つの技術を、川崎市入江崎総合スラッジセンターで実証を行うという。
実証では火力発電所や廃棄物発電施設などで採用されている高効率のボイラタービン発電技術である廃熱回収型高効率発電を、含水率が高いため発電が難しい下水汚泥の焼却施設に適用する。ここでは独自開発の小型高効率タービンを採用し、下水処理水を復水冷却に活用することで、国内の平均的な規模(1日当たり約100トン)の汚泥焼却設備でも、高効率発電を実現。自施設での使用電力を賄うことが可能である。
局所撹拌空気吹込み技術は、焼却炉への燃焼空気を2か所に分けて局所から吹込み、効率よく下水汚泥を燃焼させることで、N2Oの発生を半減する。同技術は2013年度からJFEエンジニアリングが川崎市と共同研究を行っているもので、特許出願中とする。
今後は実証事業を通して、これら技術の実用性を国内外に発信し、同技術の普及拡大を図っていく。またJFEエンジニアリングは、資源循環型社会の構築や再生可能エネルギー分野に対して、最先端の技術を積極的に提案していく方針だ。
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