機械学習による予兆診断が生む価値、日立に聞く:エネルギー管理(2/2 ページ)
日立パワーソリューションズが注力する産業用設備の予兆診断システム「HiPAMPS」。設備に搭載したセンサーから得られるデータを自動で収集し、その変化を機械学習を用いて早期に検出することで、予想外の停止による損失を回避するとともに、保守管理の手間やコスト削減に貢献するという。同社の塩原伸一氏にHiPAMPSの特長や、今後の展開などについて話を聞いた。
故障原因推定サービスなどを追加
HiPAMPSはサービスの発表後、さまざまな機能拡充を行っている。2016年6月には予兆診断にエッジコンピューティングを取り入れた。エッジコンピューティングとは現場により近い位置で、センサーで取得したデータをクラウド基盤に上げるべきかどうかを選別し、必要なデータだけを送り込む仕組みのことである。HiPAMPSの診断エンジンをイタリアEurotechのIoTゲートウェイに組み込み、現場にあるゲートウェイで簡易予兆診断を可能にした。ネットワークの負荷軽減、通信費用の削減などのメリットがある。
また塩原氏は「設備にセンサーを取り付けてデータを収集しているが、情報は社外に持ち出したくないという要望が多かった。エッジコンピューティングによる簡易予兆診断はクラウドにデータを上げないため、セキュリティ向上にもつながる」と語る。
2017年4月からは「故障原因推定サービス」と「故障予測サービス」を新たに追加した。原因推定では過去の故障対策やメンテナンス記録等の情報と、異常を検出した部位のセンサー情報を登録しておく。故障予兆を検知したときに、センサーとの相関関係などから類似情報を検索し、故障部位の特定に有効な情報を表示する機能だ。
故障予測は過去の診断データから設備の状態推移をグラフ上に見える化し、稼働の継続可能時間を推定することで、故障発生時期の予測を行ってくれる。
現在は自動車やロボット分野などの生産ラインを中心に、概念実証(PoC:Proof of Concept)で引き合いが増えているという。同社が導入した風力発電設備でもHiPAMPSのPoCを始めた。塩原氏は「顧客からみると、予兆診断は今までかかっていないコストが必要となる。設備が壊れなければ効果も分からないため、HiPAMPSが一気に広まることは難しいだろう。PoCを続けることで、その価値を知ってもらいたい」と語った。
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