波の揺れが電力に、日本初のシステムが実証稼働:自然エネルギー(2/2 ページ)
東京都・伊豆七島の1つである神津島の沖合で、日本初の波力発電システムの実証試験が始まった。三井造船が開発を進めているシステムで、海面に浮かんだフロートが波で上下運動するエネルギーを機械的に回転運動に変換して発電する。
発電コストが課題の波力発電
豊富かつ24時間利用できる自然エネルギーとして期待される波力発電。普及のカギはコストだ。発電システムそのものの費用に加えて、生み出した電力を地上に送電するためのコストも掛かる。沿岸から遠くなるほど強いエネルギーを得やすくなるが、それに比例して送電コストも大きくなる。
そこで最近では港の防波堤付近など、沿岸に近いエリアに設置するタイプの波力発電システムの実証が進んでいる。2016年11月には岩手県の久慈市にある「久慈港」で、日本で初めて電力会社の系統に接続する波力発電所が実証稼働した。
東京大学・生産技術研究所が中心となって開発した波力発電所で、海底に設置する基礎部分の上に建屋を建設し、その中に建屋に発電機を収めている。その下にぶら下がるように設置している板(ラダー)が、波を受けて振り子のように運動し、発電機を回転させて発電する。発電能力は43kWで、平均して10kW程度の発電を見込んでいる。
異なる方式の波力発電システムでは、NEDOが2015年に山形県酒田市の酒田港で実証試験を行っている。これは港の護岸に直接取り付ける方式のシステムで、海面の上下の動きによって気流を生み出し、タービンを回転させて発電する仕組みだ。既設の護岸に後付けできるようにすることで、設置コストの低減を狙ったシステムだ。
現状の波力発電のコストは1kWh(キロワット時)当たり60円程度。NEDOは今後のロードマップとしてまず発電コスト40円/kWhのシステムを確立し、2020年度以降に向けて20円/kWhを実現する要素技術の開発に注力していく方針だ。
※【訂正】初出時、酒田港の所在地について記載の誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
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