自由化で先行する欧州、その後追う国内企業の動向:法制度・規制(2/2 ページ)
資源エネルギー庁は、エネルギー政策の動向に関する年次報告書「2016年度エネルギー白書」を閣議決定した。その第1部 3章から自由化で先行した欧州の事例と国内の動向を紹介する。
日本をとりまく環境の変化
国内企業においても、海外展開および異分野への進出は増え始めているという。東京ガスと大阪ガスは海外事業に注力する計画を掲げており、東京ガスは利益ベースで2020年に海外比率25%、大阪ガスは2030年に同3分の1まで拡大する方針だ。
東京ガスは上流分野で資源事業の拡大、LNGバリューチェーン構築を目指す。中下流分野はエネルギーサービス、エンジニアリング事業の海外展開を検討。大阪ガスは北米とアジア、オセアニアを中心に上流から中下流までの事業拡大を目指す。
異分野への進出としては、大阪ガスと関西電力の事例を挙げた。大阪ガスは子会社の大阪ガスケミカルを通じて、水や空気の浄化などに利用する活性炭事業で大手のJacobi Carbons ABを約383億円で買収するなど、近接事業への進出を行っている。
関西電力は、2015年10月に日射量短時間予測システム「アポロン」を発表した。気象庁の衛星画像を利用して1km四方の雲の種類と状況を分析し、最大3.5時間先まで3分刻みに推定・予測できるシステムだ。60分先予測の総合誤差は、9%以下を実現。中央給電司令所に導入することで、需給制御に関わるコスト削減につながったとする。
動き始めたJERAの挑戦
国内における動向には、東京電力と中部電力が2015年4月に折半出資で設立したJERAも「動き始めたJERAの挑戦」として紹介されている。JERAでは火力発電事業の機能別再編を目指し、2019年度上期には既存火力事業の統合を図る予定。統合が完了した場合、「LNG調達規模」と「火力発電規模」において世界最大級となる想定だ。
なおエネルギー白書では、今回紹介した他に福島復興の進捗やエネルギー政策の新たな展開などがまとめられている。資源エネルギー庁のWebサイトから閲覧可能だ。
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