サトウキビの搾りかすでバイオエタノールを製造、タイで有効性を実証:自然エネルギー
月島機械とJFEエンジニアリングはオンサイト酵素生産技術を用いて、バイオエタノールの製造技術の有効性を実証し、技術面や採算面で実現可能な商業生産モデルを構築した。
大量に排出される余剰バガスを有効活用
月島機械とJFEエンジニアリングは2017年6月、オンサイト酵素生産技術を用いてバイオエタノールの製造技術の有効性を実証し、技術面や採算面で実現可能な商業生産モデルを構築したと発表した。この取り組みはタイのサラブリ県に建設したバイオエタノール製造プラントで、サトウキビの搾りかす(バガス)を原料に実施したものである。
タイは近年の急速な経済発展により、エネルギー消費量が著しく増加傾向にあるものの、その多くを輸入に依存しており、エネルギー供給不足への対策が課題となっている。そのためタイ政府は、バイオエタノールの増産を目指す方針を掲げている。
タイは世界トップレベルのサトウキビ生産量を誇る一方で、製糖工場では砂糖生産の際にバガスが大量に発生しており、工場のボイラ燃料に使用する供給量の60〜80%以外は余剰バガスとして有効利用されることなく廃棄されていた。バガスのようなセルロース系バイオマスを原料とするバイオエタノールの製造では原料費と酵素費がコストの大部分を占め、これら費用の低減は普及を図る上での最重要の課題だったという。
両社はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とタイ工業省サトウキビ・砂糖委員会の基本協定のもと、バイオエタノール製造プラントで製糖工場から副産物として大量に排出される余剰バガスを原料に、酵素生産微生物によるオンサイト酵素生産技術と同時糖化発酵技術を用いて、バイオエタノール製造技術の有効性を実証した。
オンサイト酵素生産技術は、これまで難しいといわれていたバガスなど、セルロース系バイオマスの主成分である繊維を糖に分解するのに必要な酵素をエタノール生産設備内で生産する技術だ。エタノール生産用市販酵素をタイ国内で調達する場合に比べて、酵素費用を5分の1以下に削減するなど生産コストを大幅に低減できる。
これをもとに商業モデルを検討した結果、タイ政府が示す参考価格26タイバーツ/リットルに対して、十分採算性が得られるコストで製造可能と結論付けた。バガス処理能力は年間1300トンで、バイオエタノール生産規模は同100キロリットルとなっている。
今後はタイをはじめ、東南アジア地域への普及・拡大を図り、未利用資源を活用したエネルギー生産と温室効果ガス排出削減への貢献を目指す。事業期間は2012年度から2016年度。予算規模は約12億円(うちNEDO負担は約10億円)とした。
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