東芝、原子炉内を遊泳して調査する小型ロボットを開発:IT活用
東芝と国際廃炉研究開発機構(IRID)は2017年6月15日、冷却水がたまっている原子炉圧力容器下部のペデスタル内を遊泳し、内部の状況を確認する小型ロボットを開発したと発表した。
2017年夏をめどに投入
東芝と国際廃炉研究開発機構(IRID)は2017年6月15日、福島第一原子力発電所3号機の原子炉格納容器内部において、冷却水がたまっている原子炉圧力容器下部のペデスタル*)内を遊泳し、内部の状況を確認する小型ロボットを開発したと発表した。
*)ペデスタル:原子炉圧力容器を支えるコンクリート製の構造物のことを指す。
今後は操作訓練を経て、2017年夏をめどに3号機内に投入される計画だ。同ロボットを活用した調査では、アクセス可能な範囲で格納容器内部の状況を確認し、燃料デブリの取り出し方針の決定に必要な情報を収集することを目的としている。
有線ケーブルによる遠隔操作が可能
燃料デブリ取り出し手順や工法を検討するためには、燃料デブリ分布状況の把握が必要とされており、各号機の内部の状態に応じたさまざまなロボットを用いた調査が行われている。今回の調査対象である3号機は2015年10月20日の調査で、原子炉格納容器内部に水位約6mの冷却水がたまっていることが確認されている。そのため、水中を泳いで移動するロボットを選定し、調査を実施することが決定した。
今回開発したロボットは、カメラとLEDライトをそれぞれ前方と後方に1つずつ搭載した直径約13cm、長さ約30cmの小型ロボットである。スクリューをロボット後方に4つ、上部に1つ搭載しており、有線ケーブルにより遠隔操作が可能となっている。
東芝はこれまで、水中を泳ぐロボットを用いた原子炉内部の点検を実施している。しかし3号機においては、原子炉格納容器内部にアクセス可能な貫通口が直径約14cmと小さいため、小型のロボットが求められていたという。今回は従来型ロボットの技術をベースに、耐放射線性を高めるとともに搭載機器の小型化、軽量化を実現した。
東芝とIRIDは2号機の内部調査ロボットも開発しており、2017年2月に調査を実施している。今後も技術開発を進め、福島第一原子力発電所の廃止措置に貢献するとした。
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