石炭火力にアンモニアを混焼、CO2削減を狙う日本初の実証試験:エネルギー管理
発電コストが低いものの、CO2排出量が多いことが課題の石炭火力。中国電力は岡山県にある火力発電所で石炭とアンモニアを混焼し、CO2排出量の削減を目指す実証試験に取り組む。事業用の発電所でアンモニアを燃焼させるのは日本初の事例だという。
中国電力は岡山県倉敷市にある石炭火力「水島発電所」の2号機において、CO2排出量の削減を目的としたアンモニアの混焼試験を実施すると発表した。試験期間は2017年7月3〜9日を予定している。燃焼してもCO2を排出しないアンモニアを混焼することによるCO2の削減効果や、事業性評価、課題の抽出などを行う計画だ。
石炭を利用する火力発電所は発電コストが低いものの、CO2排出量が多いことが課題だ。そこでバイオマス燃料など、別の燃料との混焼を行うことで、CO2排出量の削減を図る取り組みが進んでいる。今回、混焼にアンモニアを選んだのは、再生可能エネルギーなどから製造した水素の輸送コストを低減するためのエネルギーキャリアとして期待が高まっていることを踏まえたものとしている。
水島発電所では従来からアンモニアを排煙脱硝装置に使用しており、貯留タンクなどの関連設備はすでに敷設されている。今回の試験に向けては、2号機のボイラーに気化させたアンモニアを運ぶ配管のみを新設した。
試験では出力15.6kW(キロワット)のボイラーに、0.6%の割合でアンモニアを混焼させる。この場合、年間約4000トンのCO2排出量の削減が見込めるという。将来的には混焼率を20%まで高めたい考えで、この場合は13万4000トンの削減効果が見込めるとしている。
なお、今回の実証は内閣府総合科学技術・イノベーション会議が進める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」のうち、「エネルギーキャリア」に関する委託研究課題「アンモニア直接燃焼」の一環。科学技術振興機構(JST)からの受託事業として実施するもので、事業用の発電所でアンモニアを燃焼させるのは日本初だという。
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