ミニストップが燃料電池を導入、京セラの業務用SOFCの効果を検証:蓄電・発電機器
コンビニエンスストアのミニストップは、千葉市の店舗に京セラ製の固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムを実証導入し、省エネ性能などを検証する。エネルギー効率がよく、CO2排出量が少ないというメリットがある燃料電池。これまでは「エネファーム」などの家庭向けが中心だったが、業務用に店舗や施設へ導入する動きが進みつつある。
イオンおよびそのグループ会社のミニストップは、東京ガスと共同で千葉市美浜区のコンビニ店舗に業務用燃料電池システムを導入する実証実験を行うと発表した。実証期間は2017年6月末〜9月までを予定しており、省エネ性能や防災性能を検証する。
実証を行う店舗は千葉市美浜区の「ミニストップイオンタワーアネックス店」。京セラが開発した固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムを導入した。ミニストップによると、3〜5kW(キロワット)クラスの業務用SOFCシステムの導入実証はコンビニ業界では初だという。
燃料電池システムは、都市ガスやLPガスなどを改質して取り出した水素と、空気中の酸素を化学反応させ、電気と熱を作り出す。心臓部であるセルに用いる電解質の種類によってタイプが異なる。電解質にセラミックスを用いるSOFCシステムは、作動時に発生する排熱を都市ガスの改質に利用できるため、発電効率の高さが特徴だ。
導入するSOFCの出力は3kW(キロワット)で、定格発電効率は52.0%。実証試験ではこのSOFCシステムと都市ガスで発電した電力を、負荷率を調整しながら店舗に供給し、省エネ効果やCO2排出量の削減効果などを検証していく。なお、導入したSOFCシステムの実証機には、停電時に電力供給できる機能を備える。災害時には専用コンセントを通して簡易照明の利用や、携帯電話などの充電が行える。ミニストップは自治体との協定で、大規模災害時に帰宅困難者を支援する「災害時支援ステーション」に指定されており、燃料電池システムの防災対策としての導入効果も検証する。
なお、京セラはコージェネレーション型の業務用SOFCの受注を2017年7月から開始すると発表している。SOFCシステムの発電出力は今回導入したものと同じ3kWで、今後ガス事業者などと連携し、小規模の飲食店や福祉施設などを中心に提案を進めていく方針だ。
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