水力発電所の点検を安全に、ドローンの自動飛行で実現:IT活用
東芝とアルパインは東北自然エネルギーと共同で、ドローンを活用した水力発電所のインフラ点検に関する実証実験を実施した。水力発電所に通じる道路の除雪前の安全確認を想定した実証で、人による操縦を行わず、約6kmを100mの対地高度で自動飛行に成功した。
東芝とアルパインは、再生可能エネルギー発電事業の東北自然エネルギー(仙台市)と共同で、水力発電所のダム・河川のインフラ点検サービスでの実用化に向けた、ドローンの目視外長距離飛行の実証実験をこのほど実施した。
水力発電所では、発電設備の安全を確認するために、定期的に巡視点検が行われているが、豪雪地域では、雪崩による危険を伴うことから、ドローンを活用した安全な点検サービスが求められているという。
今回の実証実験では、東北自然エネルギーが所有する新潟県東蒲原郡の「新下平発電所」に通じる山岳道路で、除雪前における道路の安全確認を想定した目視外長距離飛行を行った。山岳地域の飛行では、高低差が激しく、樹木などにより上空から道路を特定することが難しい。そこで、三次元の地図情報から航路を設計することで、人によるコントローラー操縦なしで、100mの対地高度(飛行しているドローンから真下の地面までの高さ)で、約6kmの自動飛行に成功した。
将来的には、目視外での飛行距離を拡大し、ドローンで撮影したダム・発電所などの画像から、東芝の画像処理・機械学習などの技術を用いて損傷部分を特定するサービスを提供することにより、効率的な点検作業への貢献を目指している。また、実証実験で得られたデータを生かし、産業用ドローンサービスの実用化に向けて、より安全な飛行技術の開発を進める方針だ。
両社は2016年9月、既に行っている車載分野などでの協業に加え、産業用ドローンによる電力インフラの巡視・点検サービス分野において提携関係を構築することで合意。東芝が持つ画像処理技術やIoT技術と、アルパインが持つ地図情報連携技術や車載システムインテグレーション技術を融合した、ドローンによる電力インフラ事業者向けの巡視・点検システムの実用化を目指している。今回は、この取り組みの一環で、両社はドローンを活用した国内外のさまざまな社会インフラ設備・施設の巡視・点検サービスの実用化に向けて、引き続き協力して取り組む方針だ。
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