東電が送電鉄塔レンタルで新サービス、5G時代を見据える:電力供給サービス
東京電力パワーグリッドが、携帯電話事業者に基地局として貸し出しできる送電鉄塔を専用Webサイトで公開する新サービスを開始した。今後次世代通信「5G」の基地局整備も始まることから、基地局の設置ニーズは高まる見込み。携帯電話事業者が送電鉄塔を借りやすくする環境を整備し、事業の拡大を図る。
東京電力パワーグリッド(東電PG)とJTOWERは、東電PGが保有する送電鉄塔情報と、JTOWERがもつ携帯電話事業者の基地局設置用に貸し出し可能な建物屋上の物件情報を掲載した地図ベースのシステム「SITE LOCATOR」を、携帯電話事業者向けに提供開始した。送電鉄塔の利用価値を高める狙いで、国内初のサービスという。
これまで、東電PGは約4万5000基の送電鉄塔を、携帯電話事業者へ基地局設置の場所として提供する送電鉄塔貸出事業を1999年から実施してきた。JTOWERは、携帯電話事業者や大手不動産会社に対し、電波対策ソリューションを提供する事業を行っているベンチャー企業で、基地局設置用に貸し出し可能な建物屋上の物件情報を所有している。
現状、携帯電話事業者は、基地局の設置が可能な場所を選定するために、建物や鉄塔の所有者と個別に直接貸し出し可否を確認している。また、携帯電話基地局は4G LTEが普及した現在でも、毎年1兆円規模の工事が実施されている。これに加えて、数年後には次世代通信「5G」の基地局整備も始まることから、今後ますます基地局向けの設置場所ニーズは高まるものと想定される。さらに、近年、自治体の防災無線、災害・気象状況を確認するためのライブカメラなど、携帯電話基地局以外でも送電鉄塔を設置場所として利用したいというニーズも高まってきた。
東電PGは貸し出し可能な送電鉄塔の位置、高さ、周辺環境などの情報をJTOWERへ提供する。JTOWERは東電PGの送電鉄塔情報と、独自に収集した建物屋上の物件情報を合わせて地図上に視覚的に提供することで、携帯電話事業者は建物や送電鉄塔の所有者に個別交渉することなく、容易に基地局の設置場所を選定することが可能となる。
送電鉄塔約4万5000基のうち(2017年6月時点)、貸出可能な物件数は約1000件で、引き続き提供可能な物件数を増やしていく方針。また、JTOWERが保有する約500件の建物屋上の不動産物件情報は、今後数万件規模に拡大していく予定だ。
さらに、東電PGは貸し出し可能な送電鉄塔の情報を公開するだけでなく、申し込み手続きの簡素化、ニーズに合わせた賃料体系の見直しも検討するとしている。
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