世代交代も円滑に、IoTで変わる製油所保全:IT活用
エネルギー業界でも、設備の保守や管理にITを活用する動きが広がっている。出光興産は石油エネルギー技術センターの実証実験に参加し、製油所の保全作業に保守システムを導入した。情報共有の効率化や、点検の抜けモレなどヒューマンエラーの低減に効果があることを確認したという。
出光興産(東京都千代田区)は、石油エネルギー技術センター(JPEC)の2016年度事業である「IoT技術活用による自主保安高度化技術に関する調査」の実証実験に参加し、モバイル端末を利用した巡回点検や装置異常解析・予測、通信設備の性能確認などの検証を行った。
国内製油所では近年、高経年化への対応、ベテラン社員の引退による製油所保全のノウハウの継承という課題が表面化している。これらの課題解決を図るため、「出光興産愛知製油所」(愛知県知多市)を利用し、IoTを活用した運転管理業務の高度化、ビッグデータ解析による設備異常の早期検知・アラート、若手フィールドマンの経験・技術力の補助を目的に実証を行った。
具体的には、装置の巡回点検結果をモバイル端末から入力することにより、現場の状況を若手点検員と制御室のベテラン技術者との間で即時に共有。それにより、適宜助言や指示を送ることができ、また点検の抜けモレなどヒューマンエラーの低減に効果があることを確認した。
また、運転データを用いた解析モデルの構築により、異常の早期検知によって設備の信頼性を高められる可能性を確認できた。こうした解析モデルの構築は、若手エンジニアの経験を補足する効果も期待できるという。実証したシステムは電話回線をベースとした専用通信回線を採用しているので、コスト面や安全性の面でも有効性が確認できたとする。
実施期間は2016年8月〜2016年11月にかけてシステム構築などを進め、その後、実証運用、解析を2016年12月〜2017年2月にかけて行った。なお、今回の実証実験は、経済産業省の「平成28年度IoT推進のための社会システム推進事業(自主保安高度化事業)」の一環となっている。
出光興産では今後も、各製油所の保全技術の向上と、円滑な世代交代に向けたIoT導入検討を推進し、安全安定操業と競争力強化に取り組む方針だ。
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