再生可能エネルギーの導入拡大やエコカーの普及に伴い、今後さらに需要が高まるとみられている二次電池。調査会社の富士経済は、大型二次電池とその構成部材の市場調査を行い、結果を公表した。大型二次電池の2025年の市場規模は9兆212億円と、2016年比で3.4倍に拡大すると予測している。
調査対象はエコカーや電力貯蔵分野、動力分野で採用されるリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池、NAS電池、レドックスフロー電池などの蓄電池と、これらに利用される構成部材だ。
市場拡大はエコカーがけん引
大型二次電池の市場は用途別でみると、2016年時点で電気自動車をはじめとするエコカー向けが50%以上を占めている。今後、電気自動車を中心にエコカー市場はさらに拡大する見込みで、これが市場の広がりを大きく後押しする。2025年には大型二次電池の用途分野の73%をエコカー向けが占めると予測した。
住宅用や系統設置向けなどの電力貯蔵分野、フォークリフトや電動二輪車などの動力分野も、需要は堅調に増加する見込みだ。電力貯蔵分野では、特に系統用電力貯蔵システム向けが大きく伸びる。
電池の種別では、さまざまな分野でリチウムイオン電池のシェア拡大が続くが、動力分野では鉛電池に根強い需要があり、今後のマイクロEV市場の拡大や産業用における安定需要があるため、小幅ながら需要は伸びると予想される。NAS電池やレドックスフロー電池の需要は、2020年頃から電力貯蔵分野において大幅に伸びると予測した。
リチウムイオンの構成部材市場も拡大
当面の主流となるリチウムイオン電池の採用拡大に伴い、構成する正極活物質、正極集電体、負極活物質、負極集電体、電解液、セパレーターの主要6部材の市場も拡大する。2016年は原料となる炭酸リチウムの価格上昇により、正極活物質の市場が2844億円と大幅に拡大した。2017年はコバルトの価格が上昇していることから、正極活物質の市場はさらに伸びるとしている。
現状、主要構成6部材の市場の約4分の1を占めるセパレーターは、電池の安全性に直結する保安部材であるため、コストアップとなるものの、機能性に優れた塗布型の採用が増加する傾向にある。電解液はヘキサフルオロリン酸リチウムの価格上昇の影響で値上がりしたため、2016年は主要構成6部材の市場に占める割合が高まった。
2016年における大型リチウムイオンバッテリーのコスト構成は、モジュール・パックコストが37%で、残りの63%がセルコスト(主要構成6部材のコスト、その他部材・組み立てコスト)となっている。需要が大きい中国で部材コストの比率が高く、正極活物質に使用される炭酸リチウムやコバルトなどの資源価格が上昇したことで、セルコストの比率が高くなっている。将来は電池メーカーの競争が激化し、セルコスト内の組み立てコストなどの圧縮が進み、モジュール・パックコストの比率が上昇する見込みとした。
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