洋上風力の導入拡大を支援、大型風車を2基搭載できる作業船を開発へ:自然エネルギー
アチハ、自然電力、東光電気工事、吉田組、若築建設の5社は、洋上風力発電用の大型風車を外洋に設置する作業船の建造について、検討を開始した。現状、日本企業が保有していない専用作業船を建造することで、国内の洋上風力発電の導入拡大を支援する方針だ。
アチハ、自然電力、東光電気工事、吉田組、若築建設の5社は、2017年7月から5社共同で洋上風力発電所建設用の自己昇降式作業台船船団「HASTY-W(ハスティダブル)」の建造について、検討を開始したと発表した。国内の洋上風力発電プロジェクトの知見を生かした、独自の自己昇降式作業台船船団を目指すという。
2016年7月に施行された改正港湾法により、全国の港湾における洋上風力発電の導入拡大が期待されている。一方、国内では洋上風力発電所建設用の自己昇降式作業台船船団を保有する企業がなく、整備が不十分な状況だ。今後、国内で洋上風力発電所の実現を促進するためには、国内の実情に適した作業船団の建造とその利活用が求められている。
ハスティダブルは、洋上風力発電事業の主力機種となる5MWクラス以上の風車を、外洋に複数機設置するために必要な組立船と、運搬船の2隻体制の船団とする計画。2隻体制にすることで、作業効率を高められるようにする狙いだ。
組立船の全長は85m、幅40m。運搬船は全長50m、幅35m。いずれも5MW級の風車2基分を搭載するスペースを有し、運搬効率の向上を図る。組立船には作業性を考慮し、1300tまで対応できるクレーンを搭載。安全性を考慮した係船ウィンチは組立船に4基(25t)、運搬船にも4基(10t)搭載する。船体は水深30mに対応でき、エアギャップを10mとることが可能だ。さらに「定点保持システム(DPS)」を利用することで、作業位置を最短30分で決定できるなどの特徴がある。
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