資源を“完全エネルギー化”、愛知県に国内最大級の複合バイオマス発電施設:自然エネルギー
愛知県豊橋市に国内最大級の複合バイオマス発電施設が完成した。市内で発生する生ゴミなどのバイオマス資源から得たメタンガスで発電する。メタン発酵後に残った汚泥も石炭代替の炭化燃料に活用し、バイオマス資源を100%エネルギー化する。
JFEエンジニアリングを代表とする特別目的会社、豊橋バイオウィル(愛知県豊橋市)が開発を進めていた「豊橋市バイオマス利活用センター」がこのほど完成し、稼働を開始した。
同センターは、これまで別々に処理されていた下水汚泥、し尿・浄化槽汚泥、生ごみを集約してメタン発酵処理し、生成したバイオガスを燃料として発電する国内最大規模の複合バイオマスエネルギー化施設だという。こうした複合処理により、これまで回収していなかった廃棄物エネルギーの有効活用を図ることに加え、メタン発酵に伴い発生する残渣(ざんさ)も炭化して燃料化を行うことで、完全エネルギー化を実現する。従来のように、各廃棄部を別々の施設で処理する場合に比べ、建設、維持管理・運営にかかるコストも低減できるメリットがある。
施設はPFI(Private-Finance-Initiative、公共事業を実施するための手法のひとつ)事業として運営され、豊橋バイオウィルは、今後20年間(運営期間2017年10月1日〜2037年9月30日)にわたる施設の維持管理・運営を行う。また、発電した電力はFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)を活用して売電する。発電量は、一般家庭換算で約1890世帯分の電力に相当する年間680万kWhを見込んでいる。
豊橋バイオウィルの資本金は1億円。JFEエンジニアリング(出資比率60%)、鹿島建設(29%)、鹿島環境エンジニアリング(10%)、オーテック(1%)が出資している。
今後、全国の自治体で同様の複合処理施設のニーズは高まっていくとみられており、同社は、今回のプラントを先進モデルとして各自治体に積極的に提案していく。また急激な都市化が進み、電源不足に加えて下水汚泥や生ごみの処理が課題となっている東南アジアなどに向けても積極的に展開する方針だ。
今回の取り組みは豊橋市バイオマス資源利活用施設整備・運営事業として進められているもので、このほど行われた施設の完成式典で、発注者である豊橋市の佐原光一市長は「ごみや下水汚泥を資源とするこの先進的な取り組みが日本全国でスタンダードなものになればと願っている」とコメントした。
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