鉄道インフラを蓄電池でスリムに、JR東日本が内房線で実証実験:蓄電・発電機器
JR東日本は千葉県の内房線内で、鉄道の変電設備のスリム化を目的とした実証実験を開始する。ブレーキ時に発生する回生電力や、電車の位置情報と蓄電池などを活用し、エネルギーを有効活用できるようにする。
エネルギーの有効活用で、鉄道の変電設備をスリムにーー。JR東日本は「技術革新中長期ビジョン」に掲げる“鉄道エネルギーマネジメントの確立”に向けて、2017年10月から千葉県の内房線内で2つの実証実験を開始すると発表した。ブレーキ時に発生する回生電力や、電車の位置情報などを活用して電力を有効利用できるようにし、変電設備をスリム化してメンテナンスコストの削減につなげたい考えだ。
1つ目の「変電設備のスリム化」に関する実証試験では、変電所内の電車に電力供給を行う既存機器群を「回生電力貯蔵装置」に置き換える。これは電車のブレーキ時に発生する回生電力を貯蔵できる装置だ。貯蔵した回生電力で、既存の電力供給設備が無くても電車に必要な電力を賄えるか検証していく。賄うことが可能になれば、変電所の既存設備をスリム化できるメリットがある。
2つ目は「電車位置情報を用いた効率的な蓄電池の充放電制御」に関する実証だ。「拝島変電所」「桶川変電所」「久喜変電所」に、既に導入している回生電力貯蔵装置の充放電制御を、電車の位置情報を利用して最適化する。
現状、各変電所の回生電力貯蔵装置では架線電圧の値を利用して充放電を制御している。しかしこの場合、実際には電車が電力の供給を必要としない状況でも、放電を行ってしまうことがあった。そのため、回生電力貯蔵装置に利用する蓄電池の容量は、こうした不必要な充放電を考慮して決めなくてはならなかった。
そこで実証実験では、GPSによる列車位置情報を活用し、適正な位置に列車が在線しているときのみ充放電する制御を行うようにする。これにより、蓄電池の小型化と長寿命化の実現が期待できる。
実証実験は内房線の君津〜上総湊間で実施する。期間は2017年10月25〜2018年6月までを予定している。
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