地域の電力需要をAIが予測、東芝が新システム:電力供給サービス
東芝は深層学習などの人工知能(AI)技術を活用した新しい電力需要予測システムを開発。気象情報などをもとに、電力需要を高精度に予測することができるという。
東芝はこのほど、高精度な電力需要予測システムを開発したと発表した。多地点における気象情報の作成と、深層学習などの人工知能(AI)技術を活用した複数の予測手法を組み合わせているのが特徴という。電力の調達や供給計画を策定する必要がある電力事業者向けに提供していく考えだ。
電力の需要予測では、通常、供給エリア内の主要都市の気象予測値を参照し、電力需要を予測するか、気象条件が近い過去の需要実績値を用いるのが一般的だ。東芝は、供給エリア内の多地点における気象予測値を作成し、気象情報と電力需要実績値の関係を効率良く機械学習させる「スパースモデリング」と呼ぶ技術を開発した。これはさまざまなデータ群の中から有意な情報を抽出する機械学習の技法で、多地点の気象情報の中から電力需要に影響の大きな地点を抽出するのに適用しているという。さらに、深層学習を用いた需要予測を実施し、これらの予測結果値を、AIを利用して最適に組み合わせることで、高精度な需要予測を実現するとしている。
東芝は、同技術を用いて参加した東京電力ホールディングス主催の「第1回電力需要予測コンテスト」で、応募約100団体の中で最高の予測精度を達成し、最優秀賞を受賞している。
高精度な電力需要予測システムがあれば、発電事業者は予想を上回る需要に対応するために行っている発電所の待機運転を減らすことができる。また、発電量が自然条件に左右される太陽光発電などの再生可能エネルギーで、発電した電力を供給するか、蓄電するかといった運用をより適切に行いやすくなるといったメリットもある。
東芝は今後、より多くの地点の需要実績値をAIに学習させることで、さらなる予測精度の向上を追求し、将来は電力事業者の効率的な需給運用を支えるシステムとして導入を目指す方針だ。
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