水力発電が生む自動車燃料、原料は水と空気:電気自動車
Audiは水と二酸化炭素を原料とする合成ディーゼル燃料の研究開発を進めている。新たにスイス北部に新しい試験生産工場を建設することを決めた。生産に必要なエネルギーは水力発電の余剰電力を活用するという。
Audi(アウディ)は2017年11月8日、スイス北部アールガウ州ラウウェンブルクで、水と二酸化炭素を原料とする合成ディーゼル燃料の生産試験工場を建設する計画を発表した。ドイツの化学メーカーIneratec、スイスの電力会社Energiedienst Holdingと共同で実施するプロジェクトで、年間40万リットルを生産する計画だという。
Audiは以前から、「e-diesel」と呼ぶ水と二酸化炭素から合成するディーゼル燃料の開発を進めている。化石燃料と混ぜて使ったり、そのまま燃料としても利用できるという。その製造プロセスは以下の通り。まず、水を電気分解して水素と酸素に分解する。次に得られた酸素を、大気や有機系の排気ガスから取得した二酸化炭素と化学反応させ、長鎖炭化水素化合物を製造する。これをさらに改良して、化石燃料に近い性質を持つe-dieselを生産する仕組みだ。
同社は既に2014年にドイツのドレスデンで、e-dieselの生産試験工場を開設している。しかし、今回建設する生産試験工場はドレスデンの工場よりも小型な設備でありながら、より効率的にe-dieselを生産し、製造コストも削減できるという。そして設備の稼働に必要なエネルギーは、水力発電設備の余剰電力を活用していく計画だ。
このようにAudiではe-dieselの製造に必要な電力に、再生可能エネルギーの余剰電力を活用していくというコンセプトを掲げている。そうすることで、電気自動車(EV)ではない内燃機関を持つ車両であっても、サステナビリティを高められるという考えだ。
Audi、Ineratec、Energiedienst Holdingの3社は、今後数週間で施設の計画を提出し、2018年初頭から工場の建設に着手する方針。e-dieselの生産も、2018年中に開始する予定だ。
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