石炭火力のCO2、“再エネ水素”でメタンに変えて有効利用:エネルギー管理
NEDOは石炭火力から排出されるCO2を有効利用する技術開発2テーマに着手。回収したCO2と再可能エネルギーから作った水素を化学反応させ、エネルギーとして使いやすいメタンを生み出す技術などのを開発する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、石炭火力発電所から排出されるCO2を有効利用するための技術開発2テーマに着手すると発表した。この技術開発では、CO2有効利用技術を用いた有価物製造プロセスや全体システムについて検証評価を行い、将来有望なCO2有効利用技術の確立を目指す。
供給安定性および経済性に優れる石炭火力発電だが、CO2排出量の多さが課題となっている。そこで、排出されるCO2の有効利用(CCU、Carbon Capture and Utilization)技術の実用化が期待されている。2016年6月に次世代火力発電の早期実現に向けた協議会で策定された「次世代火力発電に係る技術ロードマップ」でも、2030年度以降を見据えた取り組みとして、CCU技術の確立が重要とされた。
こうした背景からNEDOは「CO2有効利用技術開発」「CO2を利用した陸上養殖技術の研究開発」の2テーマに着手する。CO2有効利用技術開発では、石炭火力発電所などからの排ガス中に含まれる高濃度CO2と、再生可能エネルギーの電力を利用して製造される水素を用いて、メタンを生成し有効利用する技術など、有望なCCU技術について、CO2有効利用技術を用いた有価物の製造プロセスやシステム全体の調査および検証試験を通じて、技術の適用性の総合評価を行う。委託予定先はエネルギー総合工学研究所、地球環境産業技術研究機構、国際石油開発帝石、JFEスチール、日立造船。
また、CO2を利用した陸上養殖技術の研究開発では、石炭火力発電所からの排ガス中に含まれる高濃度CO2を効率的に海水に溶解させ海藻(かいそう)を培養する、陸上養殖製造プロセスの確立に関する調査研究に取り組む。委託予定先はNECソリューションイノベータとなっている。
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