エネルギー×AI市場、2025年度までに81倍の成長予測:エネルギー管理
富士経済は、住宅やエネルギーなどの分野でAIを搭載した機器やサービスの国内市場予測を発表した。AI活用による業務・産業向け省エネサービスでは、2025年度の市場規模が2017年度比で81倍に拡大するという。
オフィスビルや物販、飲食店舗など中小規模施設から普及との予測
調査会社の富士経済は、住宅やエネルギーなどの分野でAI技術を搭載した機器やサービスの国内市場を調査し、2025年度までの市場予測を発表した。
今回の調査対象は、機器内に専用のAIチップを搭載し、音声認識やデータ解析などの機械学習や推論機能をもつ住宅、エネルギー分野向けの機器15品目と、クラウドなどのAIプラットフォームで機械学習や推論機能を活用した上記分野向けサービス5品目の市場。
AIを活用したエネルギー使用量の見える化、省エネを図るためのデータ分析や運用改善支援などの業務・産業向けサービスにおいて、2017年度では市場規模が1億円になると見込む。2025年度には市場規模が81億円に拡大すると予測し、2017年度比で81倍に成長するという。この予測では、市場はサービス利用に関わる通信費用やシステム維持費用、運用改善コンサルティング費用などのランニングコストのみを勘案し、導入費用などイニシャルコストは対象外としている。
AIを活用した省エネサービスは、設備や稼働状況が近いオフィスビルや物販、飲食店舗など、中小規模の業務施設から普及が始まると予測。同一施設の経年変化や類似施設との比較分析に機械学習を用いることで、専門知識を有するコンサルタントの訪問診断が不要になるなど、サービス提供費用を大幅に削減できる可能性があるという。
一方、産業施設において2017年時点では、自社工場向けの実証導入にとどまるケースが多いと指摘。これは、生産設備の多様さや生産量、品目の頻繁な変更などが行われるため、AIを活用して学習した運用や省エネ制御のノウハウを他施設に応用することが難しいとする。また、個別施設の運用パターンを学習すること自体が数年を要する作業として、産業向けに汎用サービスとして本格的に商用化されるのは2020年以降で、導入施設も限定的になるとしている。
HEMSや太陽光発電O&MにもAI採用が進む
また、AI搭載機器やサービス全般の動向として、2025年度の市場規模が2017年度比で、それぞれ68.9倍、169倍になると大幅な成長を予想する。AI搭載機器では、ルームエアコンや住宅用蓄電池などが普及することや、スマートスピーカーやHEMS(Home Energy Management System)の市場投入が進むという。
また、AI活用サービスの市場動向では、2017年より上述の業務・産業向け省エネサービスや太陽光発電O&Mの一部企業で商用化されているが、多くは開発や実証実験段階にあるとする。AI活用により、競合サービスとの差別化や高付加価値化が訴求できることから、中長期的に住宅・業務・エネルギー分野向けサービスでもAI導入が進むとする。
関連記事
- 地域の電力需要をAIが予測、東芝が新システム
東芝は深層学習などの人工知能(AI)技術を活用した新しい電力需要予測システムを開発。気象情報などをもとに、電力需要を高精度に予測することができるという。 - AIでデジタル発電所を構築、火力発電の運用を高度化
関西電力と三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は、AI技術活用した火力発電所の運用高度化サービスの開発に着手する。AI技術でバーチャルなデジタル発電所を構築し、事前に運転条件の変更による影響などを検証できるようにする。 - 電気使用量から各家電の状況をAIで推定、中部電力が検証
中部電力はBidgely(ビジェリ)とABEJA(アベジャ)と共同研究を行い、人工知能(AI)を活用した電気使用量の分析技術について検証することで、各家電の使用状況の推定を目指す。より顧客に合った省エネ方法や家電の使い方に関するアドバイス、見守りサービスの提供につなげる狙いだ。 - エネルギー消費急増のデータセンター、AI技術で運用最適化へ
IoTやビッグデータ活用が進み、エネルギー消費量の増加が課題となっているデータセンター。ICT機器から設備まで含めた連携制御により、運用コストの削減を目指す。 - 人工知能でエネルギー管理も、電力需要と発電量をリアルタイムに予測
エネルギー管理の分野でも人工知能の技術を取り入れる研究開発プロジェクトが始まる。太陽光などの発電量と家庭や企業の電力需要を人工知能でリアルタイムに予測する試みだ。発電量と需要を的確に予測できると、小売電気事業者は卸売市場から電力を調達しやすくなる。 - 東京電力がIoT住宅の“プラットフォーマー”へ、ソニー発AIベンチャーの技術がカギに
東京電力がIoTを活用した住宅向けエネルギーマネジメントサービスの開発に向けて、大和リビングマネジメントと共同で実証実験を開始する。ソニー発のベンチャー企業であるインフォメティスとも提携し、同社が持つ「機器分離推定技術」で電力の使用状況に応じて家電製品を自動制御し、エネルギーを効率運用できるサービスの開発を目指す方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.