設備需要は頭打ちも、国内バイオマス市場は30年までに倍増:自然エネルギー(2/2 ページ)
矢野経済研究所が国内のバイオマスエネルギー市場の推移予測を公表。市場全体は2020年度に向けて倍増し、さらに2030年度には3倍以上に拡大すると予測した。
バイオマス発電市場を牽引するのは、木質バイオマスの発電事業とみられる。木質バイオマスの発電事業者は、従来は林業や製材業、製紙業などに関連する事業者が主体であったが、FITの適用により、商社や大手エネルギー会社の新規参入事業者が相継いでいる。
さらに、メタン発酵ガス化発電事業も増加している。その主体は、自治体の下水処理場における下水汚泥のメタン発酵であり、バイオガスを発生させて発電事業を行う。最近の自治体では、発生させたバイオガスを燃料として発電事業者に販売する事業形態が主流になってきている。
バイオマス熱(蒸気)供給事業の多くは、木質バイオマスボイラーなどで熱(蒸気)供給(自家消費を含む)を行う事業であり、従来より製紙工場、製材工場、セメント工場などで行なわれていた。これらの工場では、石炭や石油などの化石燃料をボイラー燃料として使用するよりも、製造工程で副生する木質バイオマスや収集可能な廃材などを燃料として使用することにより、コスト低減、CO2排出削減を図るものだ。バイオマス発電の増加により、コージェネレーション(熱電併給)形態での導入も進むことから、バイオマス熱(蒸気)供給市場は、2016年度の298億円から2030年度には484億円に増加すると予測している。
バイオ燃料供給事業は、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェット燃料を供給する事業であり、事業形態としては自家消費と他者(燃料供給事業者またはエンドユーザー)への販売がある。バイオ燃料供給市場は、新燃料の開発により、2016年度の643億円から2030年度には894億円に増加するとみられる。
バイオマスエネルギーの利用では、設備システムでも市場を形成している。バイオマスエネルギー設備は、バイオマス原燃料のエネルギーを熱(蒸気)、電気、バイオ燃料などに変換するためのプラント設備システムであり、その主機としては、バイオマスボイラー、バイオマスボイラー/発電システム、バイオマス熱分解ガス化/発電システム、メタン発酵ガス化/発電システム、バイオ燃料製造システムなどがある。
FITの開始とともに、こうした設備システム市場にも多くのメーカーが参入している。同設備市場(設備導入量)は、主にバイオマス発電市場の伸びとともに拡大し、金額ベースで2016年度の2253億円から2017年度には前年度比10.6%増の2492億円、2018年度には同32.7%増の3308億円に増加すると予測する。ただ、その後、長期的にはFITでのバイオマス発電設備導入が飽和し、本来の市場規模の水準に落ち着くものとみられることから、2020年度には2343億円、2030年度には1159億円と縮小すると予測されている。
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