EVの“電欠”をお助け、現場作業や災害時にも役立つ移動充電車:電気自動車
モビリティープラスと東洋電産は、「オートモーティブワールド2018」で移動急速充電車を展示した。発電・蓄電・充電の機能を1台のトラックに搭載し、EV向けロードサービスや災害対応への活用を目指す。
電欠EVが充電10分で20〜30kmの走行が可能に
モビリティープラスと東洋電産は、「オートモーティブワールド2018」(2018年1月17日〜19日、東京ビッグサイト)で移動急速充電車を展示した。発電・蓄電・充電の機能を1台のトラックに集約し、“電欠”を起こしたEV(電気自動車)などのロードサービスや電源がない現場での電気機器利用、停電時など災害対応への活用を目指す。
今回展示を行った移動急速充電車は、小型トラックをベースに同社がリチウムイオンバッテリーやCHAdeMO規格に対応した急速充電器などの架装を行った車両。電欠したEVでもこの充電車から10分程度充電することで、20〜30km程度の走行が可能になるという。
この移動急速充電車は、同社が開発したトラックの走行用エンジンを発電に用いる「True-G」システムが大きな役割を果たしており、エンジンルームに設置された専用オルタネーターがバッテリー充電用電力や、外部給電用の単相100V・三相交流200Vの電力を供給する。リチウムイオンバッテリーには東芝「SCiB」を採用し、荷台下に配置している。
走行用エンジンの発電利用によって走行時にも自車搭載バッテリーへ充電でき、15kWのオルタネーターと10kWhのバッテリーを搭載した標準スペック車両では1時間程度の走行によってバッテリーが満充電されるという。また、CHAdeMOによる車両への外部急速充電にも対応する。
このTrue-Gシステムでは、荷台から発電・蓄電用スペースを排すことができたのもメリットの1つとなる。移動急速充電車以外の用途においても、荷台空間の広さが重要となるタイヤサービス車、道路や橋梁(りょう)の非破壊検査測定車、地震体験車などさまざまな用途で顧客から引き合いを得ているという。
車両の発電能力や搭載バッテリー容量、架装機器は顧客の要望に応じたオーダーメイド型で提供し、標準スペックの移動急速充電車は2000万円程度で販売しているという。同社では今後展開予定の分野として、災害時に仮設住宅へ電気を届ける「電気の宅配システム」や、電動式冷凍コンテナの動力源利用を挙げ、顧客ニーズのヒアリングや実証実験を進めていくとしている。
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