未利用の河川水で1200世帯分の電力を、自治体と民間企業が共同事業:自然エネルギー
山形県北部にある大蔵村で、砂防ダムを活用した小水力発電事業の実施が決まった。村と民間企業が共同出資する事業で、年間3500MWh(メガワット時)の発電量を見込む。
日本工営(東京都千代田区)は、グループ会社の工営エナジー、山形県大蔵村、もがみ自然エネルギー(山形県新庄市)と共同出資で「おおくら升玉(ますだま)水力発電」を設立し、山形県銅山川の「舛玉砂防堰堤(えんてい)」を利用した小水力発電事業を実施することで合意したと発表した。
今回の水力発電事業は、山形県大蔵村管内の銅山川にある舛玉砂防ダムを取水設備として活用し、堰堤直下に発電所を建設するもの。土石流防止のダムとして貯水機能を持たない砂防堰堤で、未利用の河川水の高低差を活用して発電を行う。
最大使用水量は毎秒6立方メートル、水車の発電出力は490kW(キロワット)で、10.2メートルの有効落差を利用して発電を行う。年間発電量は約3500MWh(メガワット時)を見込んでいる。これは、一般家庭約1200世帯分の年間使用電力量に相当する。発電した電力は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」に基づき売電する。2020年8月に稼働を始める予定だ。
日本工営では2008年から全国の小水力事業適地調査を行っており、同堰堤を適地として提案し、大蔵村の協力を得たことから地元企業のもがみ自然エネルギーを含む3者での特別目的会社(SPC)設立合意に至った。水力発電で地元企業含む民間企業と地方自治体との共同事業形態は全国でも珍しい取り組みとなるという。今後、地域特性に応じた再生可能エネルギーの導入によって地域貢献を行いながら電力自給率の向上を目指す先駆けとなる事業を目指す。
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