「土にかえる」電池をNTTが開発、生物・肥料由来の材料で実現:蓄電・発電機器
NTTが「土にかえる」新しい電池を開発。肥料成分や生物由来材料を活用しており、レアメタルフリーなため、使用後も環境への影響がないという。
日本電信電話(NTT)は2018年2月19日、土壌や生物へ悪影響を与えないレアメタルフリーの新しい電池を開発し、動作を確認したと発表した。名称は「土に還る電池(ツチニカエルでんち)」。電池部材は肥料成分や生物由来材料から作られているため、使用後も環境に悪影響を与えないという。
ツチニカエル電池は、セパレーター、筺(きょう)体、正極に生物由来材料を、負極と電解液には肥料成分を利用している。一般に電池の電極は、酸素が拡散できる3次元の導電性多孔体構造が求められる。従来の電極は、結着剤により粉末状カーボンを固形化し構造を形成しているが、結着剤にはフッ素系樹脂などが使われており、燃焼時には有害ガスが発生することもある。また、土壌などには含まれていない物質であり、低環境負荷の材料とは言い切れない。そこでNTTでは生物由来材料に前処理を施し、多孔体構造を有するカーボン化に成功。結着剤自体が無いカーボン電極を開発した。
開発した電池の動作確認をしたところ、測定電流1.9mA/cm2において電池電圧1.1Vを記録した。さらに、数個を直列につなぎ、市販のBluetooth Low Energyの温度センサーモジュールに接続したところ、モジュールからの信号を受信して電池が動作することも確認できたとしている。
なお、電池が植物に与える影響を確認するために、肥料検定法に基づく植害試験も実施した。これは、使用済み電池を粉砕して土壌に混合し、そこに植えた小松菜の発芽状態によって土壌への影響を評価するもの。その結果、ツチニカエルでんちは従来の電池と異なり、植物の成長に悪影響を与えないことが確認でき、「土に還る」というコンセプトを実現できたとしている。
NTTでは今後、電池の性能のさらなる向上に取り組む他、ツチニカエルでんちを活用したセンサーサービスの提供を検討していく。なお、この成果は2018年2月22〜23日に開催する「NTT R&Dフォーラム2018」で披露される予定だ。
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