電池いらず、環境発電EnOceanが農業のIT化を支える:省エネ機器
環境発電の分野で、積極的な展開をみせる無線規格「EnOcean(エンオーシャン)」。EnOceanアライアンスのパートナーであるサイミックスは、EnOcean長距離無線システム用センサーソリューションを2017年3月に量産化した。NTT東日本が農業分野で採用を決めたという。
EnOcean長距離無線システム用センサーソリューション
光や振動など自然に存在する微小なエネルギーを活用して電力を作る「環境発電(エネルギーハーベスティング)」。電力供給を必要としないため、IoT時代に爆発的な増加が見込まれるセンサーへの活用などが期待されている。エネルギーハーベスティングの分野で、積極的な展開をみせるのが無線規格「EnOcean(エンオーシャン)」だ。
EnOceanアライアンスはサービスプロバイダーやエンドユーザー向けに、無線通信モジュールや接続ケーブル、センサーの供給を行っている。同アライアンスが2017年4月に開催した説明会では、長距離無線システム用センサーソリューションを紹介した。
同ソリューションは925MHz帯の長距離無線システムで、屋外用環境モニタリング用センサー送信モジュール「EMOS 100L」、同受信モジュール「EMOT 100L」、温湿度センサー、照度センサー、土壌温度センサー、土壌水分センサーで構成されている。
送信モジュールEMOS 100Lには太陽電池が内蔵されており、照度が1000ルクス(曇りの日でも約1万ルクスはある)あれば発電量が電力消費量を上回るという。通信距離はモノポールアンテナで見通し3〜4km、フラットアンテナで見通し6〜8km。耐久性に優れたアルミニュームハウジングを採用しており、屋外でも10年以上の耐久性がある。
国内ではサイミックスが同ソリューションの商品化を行い、「NSOS-100」として2017年3月から量産を開始。温湿度と照度、土中温度、土中湿度を定期的に測定し、無線データ送信するシステムとして、IT農業への展開を進める。2014年10月から長距離無線通信を活用したIT農業の実証実験を実施してきたNTT東日本がNSOS-100の採用を決めたという。
サイミックス社長である吉川久男氏は「EnOceanは、同じセンサーをさまざまな無線通信プラットフォームにそのまま使用できるジェネリックインタフェースを採用している。そのためセンサーによるファームウェアの変更などをする必要がないのが特長」と語る。
NSOS-100の価格は、センサーを含めた送受信機のセットで20万円。吉川氏は「バッテリーが不要なことを想定すると、トータルコストでは十分優位性がある」とする。今後は超音波センサーや人感センサーも開発し、他の市場への展開も行う予定だ。
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