ソニーの技術を初融合、村田が太陽光の自家消費向け蓄電池を開発:蓄電・発電機器
村田製作所は住宅太陽光発電の自家消費向けとなる新型蓄電池を開発。2017年にソニーから買収した電池事業のバッテリーを活用した初の製品になる。
村田製作所は、同社製リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを使用し、蓄電池と充放電DC-DCコンバータを一体化した「HVDC蓄電ユニット3.5kWh(パワーコンディショナー連係タイプ)」と、蓄電池とパワーコンディショナーを一体化した「All-in-One蓄電システム4kW/2.3kWh(ハイブリッドタイプ)」を開発したと発表した。どちらも、太陽光パネルを設置する住宅の自家消費を促進する用途での拡売を目指しており、2018年内に量産出荷する予定だ。
今回の製品は、2017年9月に買収完了したソニーエナジー・デバイスのバッテリー技術と同社独自の電源技術を融合させた初の製品。このうち蓄電ユニットはパワーコンディショナーと連係させることにより、住宅の自家消費に向けた蓄電池システムを構成することが可能だ。製品に使われているリチウムイオン二次電池「Fortelion」は、オリビン型リン酸鉄を採用したことにより、結晶構造が安定しており壊れにくく、電源事故などが起こってもバッテリーが熱暴走する確率が低く、電池の機能を長期間維持できるという。さらに、期待寿命が15年と長く、長期サイクル寿命(1万〜1万4000回)が期待できる点も特徴としている。
HVDC蓄電ユニット3.5kWh(パワーコンディショナー連係タイプ)は、この蓄電池に、充放電DC-DCコンバータ、バッテリー管理システム(BMS)を一体化したもので、パワーコンディショナーとHVDC連係(350〜400V)させることにより、高い変換効率を実現する。加えて、RS-485、CANといった外部通信機能を備えているので、他メーカーのパワーコンディショナーとの接続も可能だ。
蓄電池容量は3.5kWhと小さいが、バッテリーが長寿命であるため、1日2回以上の充放電に対応。電力変換効率も98%以上を実現し、充放電のロスを低減することができる。出力電力は3.5kW(定格)、5.0kW(最大)で、外形寸法は幅641×高さ735×奥行き324mm。
All-in-One蓄電システム4kW/2.3kWhは、蓄電池ユニットとパワーコンディショナーを一体化したハイブリッド型蓄電システム。こちらにも、Fortelionを使用しており、高い安全性と長期サイクル寿命を実現しているという。
筐体のサイズ幅712mm×高さ735mm×奥行き324mmの中に、蓄電ユニットとパワーコンディショナーを収納しており、住宅の屋内外どちらにも容易に設置することができる。このシステムには、RS-485でつなぐリモコンを接続し、システムのオンオフや、基本設定が可能だ。
また、リモコンから無線でHEMS(Home Energy Management System)に無線で接続して、スマートフォンから発電状態などの動作状況をモニターすることもできる。さらにバーチャルパワープラント(VPP)のような電力会社やアグリゲータなどからの上位指令に応じて運転コースや蓄電池の制御をすることが可能となっている。
これらの製品技術は、まず家庭用の自家消費用途に向けて製品化するが、将来は産業用電力向けや、海外展開など幅広く事業化していく考えだ。
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