かけるだけで木質チップが乾燥するシート、バイオマス燃料品質向上へ:自然エネルギー
日比谷アメニスは、屋外に堆積している木質バイオマス燃料に掛けることで保管・乾燥が可能なシート「TOPTEX」について実証を行い、国内でも乾燥効果があることを確認した。
日比谷アメニス(東京都港区)は、屋外に堆積している木質バイオマス燃料に掛けることで保管・乾燥が可能なシート「TOPTEX」について1年間に渡って実証を行い、国内でも乾燥効果があることを確認したと発表した。
実証は、2016年10月から国内大手バイオマス燃料供給会社であるタケエイグリーンリサイクル(山梨県富士吉田市)にて実施され、屋外保管されている木質チップ上にTOPTEXを敷設することでチップの乾燥が促進されたという。
バイオマス燃料供給会社では、供給燃料の品質を改善するともに、安定供給を行うために在庫を確保することが重要なミッションとなる。タケエイグリーンリサイクルではTOPTEXを使用することで、保管状態で燃料乾燥が進むことで燃料品質の向上が可能となり、さらに建屋を必要としないため大量のバイオマス燃料の屋外保管が実現できた。
他の国内事例におけるTOPTEXの乾燥効果として、保管開始時水分約45%W.B(湿量基準含水率)だったチップが、TOPTEXを掛けずに保管していたチップは約70%W.Bまで上がったのに対し、TOPTEXを掛けて保管していたチップは約25%W.B.まで下がったことも報告されているという。
木質チップは三角形の山状に堆積することで、チップの発酵熱により内部空気が最下部から熱される。熱された湿潤空気は上部に流出するとともに、側面からの外気流入により自然対流が発生することでチップは乾燥する。TOPTEXは、透湿防水性を持つシートのため、降雨による水分の追加を遮断しつつもチップから排出された水分はTOPTEXから外部に放出されるため、乾燥が効率的に進行するという。
木質バイオマス業界で乾燥チップのニーズが高まっていることに伴い、日比谷アメニスはTOPTEXという建屋・ランニングコスト不要の保管・乾燥機能のための新しい選択肢を増やすことで木質バイオマス業界の発展に寄与することを目指す。今後は大量の木質チップやPKS(パーム椰子殻)を使用するバイオマス関連事業者への導入を進める方針だ。
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