風力発電をつなぐ独立系統を蓄電池で安定化、NEDOがロシアで実証へ:自然エネルギー
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、ロシアのサハ共和国内に所在する独立系統地域において、風力発電システムを含む系統を安定化させる「ポーラーマイクログリッドシステム」を構築し、安定的なエネルギー供給を行う実証事業を開始した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、ロシアのサハ共和国政府および電力会社のルスギドロ社との間で、風力発電システムを含むエネルギーインフラ実証事業に関する協力覚書(MOC)を締結し、実証事業を開始したと発表した。
この実証事業は、サハ共和国内の独立系統地域であるティクシ市において実施され、風力発電システムを含む系統を安定化させる「ポーラーマイクログリッドシステム(Polar Microgrid System)」を構築し、安定的なエネルギー供給を行うもの。
ロシア極東地域には大規模な電力系統と接続しておらず、電力供給を小規模なディーゼル発電機に依存している独立系統地域が多数存在する。これら地域では、発電用燃料の輸送コストにより発電単価が極めて高い状況にあり、同国地方政府は電力価格を電力系統に接続する地域と同等に維持するため、財政負担が重くのしかかっている。また、ディーゼル発電機の老朽化が進んでおり、電力の安定供給に課題がある状況だという。
こうした中、NEDOは本実証事業を実施するにあたり、実証前調査の協力に関する意向表明書に2017年9月6日に署名し、実証事業の基本的なシステム構成やスケジュールなどについて議論を進めてきた。そして、このほどモスクワ市のルスギドロ本社で、協力覚書(MOC)を締結し実証事業を開始した。実証期間は2021年2月までの予定。
実証事業の委託先は、三井物産、東光高岳、駒井ハルテックの3社。同市の既存発電設備に、実証事業で新設する風力発電機とディーゼル発電機、蓄電池によるエネルギーマネジメントシステムを組み合わせたポーラーマイクログリッドシステムを構築し、極寒冷地における低コストで、安定的なエネルギー供給技術に関する実証を行う。本実証事業で導入する風力発電には、極寒冷地仕様の発電出力300キロワット(kW)中型風車3機を導入する。
本実証では、風力発電機とディーゼル発電機の効率的な運用を行うことで、年間で約16%のディーゼル燃料消費削減を見込む。今回の取り組みは、日露首脳会談で提示された8項目の「協力プラン」のうちの「石油、ガス等のエネルギー開発協力、生産能力拡充」に含まれるとする。
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